最新コスメ科学 解体新書【第6回】

2024/06/07 化粧品

美人ってどんなひと? (2)。

美人ってどんなひと? (2) ~神経科学的アプローチ~

 

 美しい人に会うとなぜ胸が高鳴るのか?いや、直接会わなくても、写真をみただけでもちょっとテンションがあがったりするのはなぜなのか?そんな研究が、神経科学の研究者によってされてきました。
 
 「美」のワクワク感のメカニズムを明かにするために用いられてきたのが、脳の疾患の診断にも登場する機能的磁気共鳴画像(fMRI)でした。この技術は、ある磁気モーメントをもつ原子核を磁場の中に入れ、特定の周波数の電磁波を与えると、共鳴してその放射エネルギーを吸収する「核磁気共鳴」を利用して、ヒトおよび動物の脳や脊髄の活動に関連した血流動態反応を視覚化する方法です。

 University College, Londonのグループは、美しい絵を見ると眉間の奥、前頭葉の底の方にある内側眼窩前頭皮質の活動が高まることを見つけました 1)。この現象は肖像画・風景画・静物画・抽象画といった絵画のカテゴリーに関係なく起こるだけでなく、音楽を聴いた時にも起こったことから、ジャンルに関わらず美しいものを見たり聞いたりしたときに応答する領域と考えられています 2)。そしてこの内側眼窩前頭皮質は美しいヒトを眼にした時も活発に活動することが発見されました 3)。また、この領域の反応は、笑っている顔を見た時にはさらに増強されたのです。内側眼窩前頭皮質は、ドーパミン等の神経伝達物質を介して快情動を引き起こし、ヒトや動物の行動に駆り立ててその意欲を強める報酬系の一つとされており、魅力的な顔は一種の報酬価値として位置づけられ、知覚者が向ける笑顔によって強められることが明らかになったのです。

 そもそもヒトの顔は、われわれの心の中では特別な対象として位置づけられていることが知られています。1997年に、Harvard大学のグループはわれわれの脳の中には顔の認識に特化した領域があることを見出しました 4)。被験者にヒトの顔やさまざまな物体、家の画像を見せながら脳の活動を計測したところ、大脳皮質の底にある紡錘状回の一部が顔にだけ反応し、血流が著しく増えることが確認され、この領域の働きによって多くのヒトの顔を見分けられることが分かったのです。

 

 

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執筆者について

野々村 美宗

経歴

山形大学 学術研究院化学・バイオ工学分野 教授 博士(工学)
花王株式会社において化粧料および身体洗浄料の商品開発に従事した後、山形大学に赴任。2017年より現職。専門は物理化学、界面化学、化粧品学。これまでに生体表面における界面現象のダイナミクス、界面活性剤を用いたエマルション・可溶化物・泡製剤の開発、化粧料・食品の触覚/食感センシングについて研究してきた。著書に『教授にきいた・・・ コスメの科学』、『化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学』(ともにフレグランスジャーナル社) などがある。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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