医薬品委受託製造に関する四方山話【第6回】

2013/09/30 製剤

11.委受託契約書のポイント(その2)
 CMOにおける医薬品製造が順調である時は、委受託契約書の内容など振り返りもしないのが普通だとおもいますが、何か大きな品質問題等が起こったときはそうはいきません。原因究明をする中で、必然的に責任の所在を明確にすることが求められ、その対策(応急対応と恒久対応)と責任負担の双方を決めていくことになります。その場合、責任所在が曖昧な案件に関しては、契約書に責任負担がどう記載されているかが重要になってきます。契約項目としては、瑕疵責任、危険負担、製造物責任などがこれにあたります。まず、瑕疵責任にはどのようなものがあるのか、考えてみましょう。ウィキペディアには、「一般的には備わっているにもかかわらず本来あるべき機能・品質・性能・状態が備わっていないこと。」とあります。定められた規格に適合するか否かということに関しては、医薬品と他製品で大きな違いはありません。一方、医薬品特有の事象としては、薬事法に由来する事項、たとえばロット番号や有効期限表示事項の記載間違い、封緘状態、微小異物の問題等があります。また、これらの事象が出荷時に判明するか出荷時は合格であったが時間が経過した後で不適になるかで、顕在化した瑕疵責任と隠れた瑕疵責任の2つに分けられます。品質契約書等で取り決めた製品規格に適合するのか不適合であるのか即座に分かるような瑕疵は前者で、規格適合品として委託側が納入したが、市場で異物が発見されたり、安定性試験の途上で溶出試験不適になり市場回収したなどの例は隠れた瑕疵ということになるでしょう。
 
 まず、顕在化した瑕疵責任について考えてみましょう。最も簡単な例は、受託者が製造方法、製造設備、試験法、原料調達先すべてを設計・設定し、その結果として規格不適となった場合ですが、委託側に責任の取りようがないのは明確です。一方でほとんどのケースは、委託者が元々製造していた製造法(委託側責任で構築)を受託者に技術移管(委受託双方で合意責任)し製造するケースだと思います。技術移管がパーフェクトに行われたとしても、避けられないような不適合が発生するケースがあります。特に問題となるのは、顕在化した不適合の責任の所在が明らかでない場合です。例として下記のケーススタディで、委託者と受託者はそれぞれどのように責任をとるべきか一緒に考えてみましょう。
 

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執筆者について

笠井 隆行

経歴

個人コンサルタント
1985年に塩野義製薬(株)入社 医薬品物性研究、分析法設定、国内外申請資料(CMCパート)作成、原薬製造プロセス研究に従事、
1997年から2年間の米国Schering-Plough社でのGlobal GMP, CMC開発の海外研修後、CMC Office長、治験薬製造室長を兼務
2006年に武州製薬(株)代表取締役社長就任、2012年に日本CMO協会会長(4年間)
2016年に富士製薬工業(株)副社長 生産統括本部長、富山工場長を歴任、
2017年からタイOLIC社 Managing Directorを兼務
2022年にシオノギファーマ(株) 信頼性保証本部長、第一生産本部長を歴任
2024年3月:シオノギファーマ(株)退職

出身地 大阪

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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