ゼロベースからの化粧品の品質管理【第38回】

2023/11/24 化粧品

前回に引き続き材料トラブルをどのように低減していくのかについて。

―『材料トラブルをどのように低減していくのか:表示ミス低減』について―

 化粧品GMPに関して、実際の運用面から留意事項についてお話させて頂いています。今回は、材料トラブルの中で市場回収につながる表示ミスに関して、法的要求事項の整理とリスクアセスメントの視点から事故低減をどのように進めたらよいかお話させて頂きます。
 これは私見になりますが、表示に関する市場回収事故の事例が多い状況にも係わらずGMP体制の監査や民間認証の審査の際には、表示に関する管理体制に対する確認はあまり行われていないように感じています。品質保証の体制を整える上では、①法的要求事項に即していることの確認 ②市場回収事故につながる事項に対する体制の確認 が重要です。その意味では、表示に関する管理体制について、審査や監査ではもっと踏み込んで行うべきであると考えます。
 それでは、まず法的要求の概要から再確認したいと思います。

1.化粧品の表示に関する法的要求
化粧品及び医薬部外品の化粧品の表示については、
① 『薬機法』は、保健衛生面から見た表示の要求事項
② 『化粧品の表示に関する公正競争規約及び同施行規則』は、実際の取引面からの不正、不当な表示の規制に関する要求事項 
が主な要求事項です。
 その他には、『消防法』や『化粧品の適正包装規則』、『PL法』の要求事項にも対応が必要です。尚、これらについては既にご案内しているため、今回は省略させて頂きます。
 

<化粧品の必要表示(例)>

 

<医薬部外品の<化粧品の必要表示(例)>

 化粧品や医薬部外品の表示は、一般的な必要表示と法的要求の根拠に上記の通りとなります。チェックリストとして自社製品について見てみて下さい。
 更に、最近はエコの概念が浸透しており問題は少なくなっていますが、海外の製品を輸入する際には、『適正包装規則』していることの確認が必要です。

(化粧品の適性包装規則)
 化粧品の表示に関して公正競争規約第11条の規定(過大包装の禁止)に基づき、化粧品の適性包装規則が定められています。
1) 直接容器の基準
外容積に対する内容物体制の割合は40%を下ってはならない。但し、内容量が40g以下で、ガラス容器および成型技術上二重成型が必要なプラスチック容器は除く。
また、容器の形態上肉厚となることがやむをえないもの(事例に該当する形状のもの)や香水、オーデコロンで特殊なデザインのもの、メーキャップ化粧品類、30g又は30mL以下の小型化粧品は除外されます。
2) 外部の容器の基準
直接容器と外部容器の間に不必要な空間がないこと。緩衝材が必要な場合は段ボールの厚みが4mm以下、若しくは公正取引協議会が認めたもの。但し、香水、オーデコロン類、メーキャップ化粧品類は除く。
3) 贈答用詰め合わせ容器の基準
詰合せ容器の内壁から化粧品まで及び化粧品と化粧品との間隔は、その最も近接する部分において上下、左右にそれぞれ1.5cm以下、深さは化粧品の上部及び下部と詰合せ容器との間隔がそれぞれ0.5センチメートル以下又はその合計が1センチメートル以下(ガラス製の破損し易い容器で直接詰合せる場合の深さは化粧品の上部及び下部と詰合せ容器との間隔がそれぞれ0.8センチメートル以下又はその合計が1.5センチメートル以下)。
4) 外容積に対する内容量の割合

 

 

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執筆者について

鈴木 欽也

経歴

1980年に㈱資生堂に入社。掛川工場で処方開発・生産技術開発を担当。ネイルエナメルのゲル化剤、色材の開発や調色に関するコンピューターカラーマッチングシステムを開発。他に高圧乳化、凍結乾燥、パーマ剤、ヘアカラー等の特殊技術開発にも従事。
その後、本社生産技術部で海外事業戦略、海外工場建設、生産技術移転、海外薬事対応の業務を担当した後、再び掛川工場でファンデーションやマスカラ生産の移管業務を担当、本社で海外原料・資材・製品調達の業務を担当した後、中国北京工場の取締役工場長として、工場建設とシャンプー、リンスの現地生産化や化粧品の工業会の業務に尽力。
帰国後、掛川工場技術部長、大阪工場技術部長を歴任、FDAの査察受け入れやEU原薬登録を実施。
また、㈱コスモビュティー執行役員 品質管理部長としてベトナム工場、中国工場を建設。現在、㈱ディー・エイチ・シーさいたま岩槻工場の工場長でメーキャップ製品の工場改修・立上げを実施した。2017年から中小企業診断士として、鋳造業、サービス業、建築業等の事業計画作成支援や企業の5S活動支援を実施している。
品質管理に関しては、米国OTC製品の化粧品業界で日本国内初のFDA査察を受け入れ、指摘事項ゼロ件での対応、ヒアルロン酸のヨーロッパ原薬登録・米国FDA登録、ヒアルロン酸の原薬工場棟の増設を責任者として推進した経験を持つ。
公害防止管理者(水質1種、大気1種)、中小企業診断士(埼玉県正会員)、FR技能士、ターンアラウンドマネージャー(事業再生、(一社)金融検定協会認定)、健康経営EXアドバイザー、ISO9001審査員補、2022年5月から(株)エコノス・ジャパン代表取締役

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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