再生医療等製品の品質保証についての雑感【第55回】

第55回:生産計画におけるキャンペーンの考え方と製造環境の維持管理 (1)


はじめに
 キャンペーンとは、組織における目標達成のための活動のひとかたまりを意味し、製品の生産活動においては、一定量の製品を準備するための一連の活動(単位)と認識します。キャンペーン生産における各工程では、一般的に、その製造環境は占有となると思います。他方、グレードAの筐体装置(安全キャビネット、アイソレータ等)を採用する製造環境は、細胞製造の工程特性上、占有をすることは製造コスト的に不合理となります。また、バッチ単位で製造環境を占有するキャンペーン設定では、環境の無菌性維持の管理において、矛盾が生じやすいと考えます。本稿では、生産計画におけるキャンペーンと製造管理の相関について雑感を述べさせていただきます。


● キャンペーン運用と製造環境運用、それぞれの最適解
 生きた細胞を生育(増幅・分化)する細胞加工製品の製造工程は、以前(第17回など)においてもお話ししましたが、流加培養のような製造方法が採用できる製品を除き、培養における培地交換や継代の作業工程は、全体工程(培養プロセス)に対して間隔が固定化されるユニットプロセスで、比較的短時間のグレードA環境下における操作となります。そのため、グレードAの製造環境を占有すると、稼働率が非常に低くなり、製造コストに対する施設維持費の比率が非常に高くなります。本来、細胞加工製品の製品原価においては、製品の原材料(培地、活性因子等)の価格は非常に高額であることが最大の課題であると考えますが、少量生産体制が主流の現状では、構造設備に関連するコスト比率は非常に高いと認識します。
 このようなグレードA環境を要する製造における、製品の製造コストの低減に向けては、1つの製造環境で複数のバッチを共有することが望ましいと考えます。(グレードA区域を最小化してコストを抑制する方法もあるとは思いますが、本稿では割愛します。)ここで将来的な細胞加工製品の製造が、同一製品の大量培養となり、同一ロットの複数バッチ(ワーキングセルバンクのバイアルごとの仕掛かり)にて稼働率を向上できるのであれば、キャンペーン運用の考え方は比較的容易と考えます。
 これに対し、少量多品種の製造体制が想定される場合は、製造コストの削減に向けた、キャンペーン運用の考え方は非常に煩雑となると考えます。キャンペーン運用の管理が単独では困難となり、複数のキャンペーン運用が他のキャンペーン作業によって影響していないことを考慮する必要が生じます。ここで必要となるのは、製造環境(グレードA区域等)の運用が適切であることの保証と想定しますが、これは誰(製造管理or衛生管理)が、どのように(モニタリングorバリデーション)行うのか、標準化された手法が存在していないと認識します。

 

● 製造環境を占有するキャンペーン運用中に生じる管理
 上述したキャンペーン運用の煩雑性は、工程切り替え(チェンジオーバー)に向けた環境維持の方法(再構築or維持)において生じる課題であると考えますが、これは、例えば自己由来細胞加工製品など、1バッチ1キャンペーンを想定する製品製造でも同様であると考えます。
 例えば、下図のような1バッチの製品製造をキャンペーン単位とする運用(例えば,自己由来細胞加工製品)においては、運用管理主体がどこで、どのように管理しているのでしょうか?

図.  1バッチの製品製造をキャンペーン単位とした場合の運用例(製造環境とユニットプロセス群)

 

 

執筆者について

経歴 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

コメント

投稿者名必須

投稿者名を入力してください

コメント必須

コメントを入力してください

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます