【第40回】Operational Excellence 実行の勘どころ 、“変革推進、品質は儲かる”

2023/09/01 品質システム

一緒に活動するメンバーを選ぶ、について。

プロジェクトの最初に行うこと(1) 一緒に活動するメンバーを選ぶ

プロジェクトや改善活動の最初に行うこと(1) 一緒に活動するメンバーを選ぶ、についてお届けします。

【一緒に活動するメンバーを選ぶ】
 はじめに質問です。皆さんの経験上、「職場で業務が順調である」とはどのような状態、雰囲気だったでしょうか。逆に「職場で業務が順調ではない」とはどのような状態、雰囲気だったでしょうか。少し思い出してみてください。
 私の経験で「職場で業務が順調である」とは、良いチームワークで、職場の同僚、上司や部下と良いコミュニケーションがとれていたとき、最も業務は円滑に進み、物事が計画通りで目標達成できました。そのときのメンバーの顔を思い浮かべると皆が笑顔で、業務が忙しくても毎日が楽しかったです。お互いに信頼関係があり、このようなメンバーと長く一緒に仕事をしたいと思いました。そのようなメンバーとは会社を離れて10年、20年経っても交流があります。マネージャーになってからも同じで、部下とのコミュニケーション、チーム内のコミュニケーションが良い状態であるときが最も業務が順調でした。「井口さんのチームに入りたい」、「井口さんの職場はいつも楽しそうですね、羨ましいです」と言われたときには、嬉しく思いました。職場の良い雰囲気は周りに伝わり、分かるようです。
 逆に「職場で業務が順調ではない」ときとは、職場がどこかでギスギスしていました。お互いに何かと疑心暗鬼で、相手のちょっとしたミスに敏感で、「それ、もっと早くに言ってくれればよかったのに」とか、「(だれだれは)今日、どこで何をしているの? 何をしていたの?」など、些細なことに目が行きがちでした。定例ミーティングで合意しても、その通りに作業しなかったり、報連相がなかったり、自分で仕事の優先順位を変えてしまったりということがありました。要は何かと、イラッとすることが多い職場でした。
 一緒に働くメンバーは選べない場合が多いですが、プロジェクトなど期間限定で一緒に活動するメンバーは可能な限り選んだ方がよいです。好きな人と組んで仕事をするという意味ではなく、プロジェクトの場合は決められた期間に結果を出す必要があるからです。そのため一緒に活動するメンバー選びは大切という意味です。
 プロジェクトや新規業務を行う場合、中心メンバー(コアメンバー)は数名です。私の経験では4−5名のチームが最も効率的です。そもそも立ち上げ時に少人数の中で意見や見解の相違があっては、その後のプロジェクト運営も上手く進みません。ある程度は気心が知れていて、お互いの特徴をよく知るメンバーで集まるとプロジェクトのスタートは上手くいきます。

【ダイバーシティ(多様性)やインクルージョン(包括・一体感・平等)とは別の次元】
 私がダイバーシティという言葉を聞いたのは1990年代後半でした。アメリカにおいて女性や有色人種などマイノリティーの地位向上や差別撤廃という概念でした。人種、年齢、性別、宗教、趣味嗜好、障害といった様々な属性の人が集まった企業組織の中で差別をしない、公正に扱うという意味でした。昨今ではインクルージョンという概念もあり、多様な人々がお互いの価値観や個性を尊重しよう、一体感を持って業務する状態を目指そうとなっています。
 企業組織の中長期的な運営や、人事研修においてダイバーシティやインクルージョンの概念を学び、それらを念頭に業務を行うことは当然です。ダイバーシティやインクルージョンの概念は大切です。
 一方でプロジェクトや物事のスタートアップ段階では、同じ問題意識、同じ方向性を持つ人と組んだ方がスピーディーで、4−5人の少人数で意見合わせと企画を行うことが効率的です。その後のプロジェクト運営もスムーズです。これは小さな集団で物事をゼロから1のレベルに立ち上げる段階の話です。プロジェクトや新規事業を立ち上げたのち、1のレベルから10のレベルに事業を拡大する場合や、さらに改善アイデアを討議したり、大きな決定事項を検討したりする場合はより多くの人に参加してもらいます。
 GMP関連の改善プロジェクトを実施する場合、一般的に部門内か、QA、QC、製造部門から代表者が集まってプロジェクトをスタートさせます。多様性を重んじる理由でGMPにあまり関わりのない人や、GMPを軽んじる人を初期メンバーに入れることは返ってプロジェクトの障害となります。問題や課題のヒアリング、改善のアイデア出し、現状のGMPやQMSプロセスを違う角度から見てどうかなど、異なる視点で意見や提案をもらう場合に参加してもらうのは効果的です。少人数では気付かなかった点を、気づくことができる場合もあるからです。
 ケースバイケース、プロジェクトの時系列により、使い分けることは大切です。

 

 

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執筆者について

井口 幸人

経歴

ライズマネジメント株式会社 代表取締役
オペレーショナルエクセレンス マスターブラックベルト
1986年にGE横河メディカルシステム入社、画像診断装置CT/MRIの営業技術、大学病院と共同研究、GEメディカル・アジアにてシックスシグマ・ブラックベルト(ビジネス変革のリーダー)の業務に従事。
2005年にコヴィディエンジャパン(医療機器)、OPEX(Operational Excellence)推進室長として、全社の変革プロジェクトを統括。その後、テバ製薬、ユーシービージャパンの生産部門でOPEX活動の責任者として従事。
2016年にライズマネジメント社を設立し、ビジネス変革のトレーニング、コンサルティングなどの活動を実施中。特にハンズオンでのプロジェクト実施、コーチングが得意です。   

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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