経皮吸収製剤 ~基礎から応用まで~【第1回】
はじめに
打ち身、ねん挫など疼痛を伴う疾患に対して、多くの患者は局所に適用する貼付剤を貼り薬や湿布薬と医師より説明を受け、処方されているのではないだろうか。筆者の母親が整形外科で診察してもらう時も、湿布薬を出しておきますねとパップ剤を、寝ている間に剥がれ易い場合は貼り付きの良いものを出しましょうとテープ剤を処方してくれる。全身性の経皮吸収製剤の場合も、貼り薬としての説明である。
アメリカに貼付剤を導出した時に、日本に倣ってテープ剤と説明したところ、テープ剤だとスコッチ®テープのようなテープをイメージしてしまうので、パッチ(patch)剤の方が理解してもらえるだろうと現地の方から説明を受けた。では、パップ剤は?との問いには、hydrogel patchと解説してくれた。
学問的には経皮吸収製剤というと全身作用を目的とした製剤を指すことが多いが、第18改正日本薬局方の製剤総則では、皮膚に適用する製剤の中に貼付剤という中分類があり、更に小分類としてテープ剤とパップ剤があり、経皮吸収製剤は製剤の分類としては記載されていない。第15改正日本薬局方(15局)の製剤総則では、経皮吸収型製剤(局方では“型”が入っている)、貼付剤、パップ剤がそれぞれ分類されていたが、その後、第16改正日本薬局方で、剤形は主に投与経路及び適用部位別に整理され、15局にあった経皮吸収型製剤は皮膚に適用する製剤のうち貼付剤に分類された1)。
このように、貼付剤には局所に適用する製剤と全身作用を目的とする製剤があるが、基本的な処方設計の考え方、製造方法、評価方法、品質管理などは共通することも多い。この連載では、経皮吸収製剤~基礎から応用まで~として、局所製剤や全身性製剤についての基礎から応用までを解説する。
1.日本における貼付剤の分類と生産金額
日本薬局方製剤総則の皮膚などに適用する製剤は、下記の通り中分類、小分類として示されている。
1 外用固形剤
1.1 外用散剤
2 外用液剤
2.1 リニメント剤
2.2 ローション剤
3 スプレー剤
3.1 外用エアゾール剤
3.2 ポンプスプレー剤
4 軟膏剤
5 クリーム剤
6 ゲル剤
7 貼付剤
7.1 テープ剤
7.2 パップ剤
これらの剤形が日本でどのくらい生産されているかは、毎年厚生労働省が発表している薬事工業生産動態統計が参考になる2)。現時点で最新の2021年度版から主要剤形の生産金額を図1に示すが、日本における外用製剤の生産高は全剤形中の約10%である2)。また、図2には主要な外用製剤の生産金額を示すが、本稿で取り上げる貼付剤は、硬膏剤(テープ剤や経皮吸収製剤が含まれる)・パップ剤・パスタ剤を参照すれば良く、外用製剤中の約23%を占めている。
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