経皮吸収製剤 ~基礎から応用まで~【第4回】

2023/12/25 製剤

経皮吸収製剤に用いられる製剤添加物について解説する。

5.経皮吸収製剤に用いられる製剤添加物(1)
経皮吸収製剤として開発する領域や対象薬物候補を見出す作業は通常paper feasibility studyと称する。しかしながら机上では可能性ありとなっても実際に計算通りヒトの皮膚を透過するかはin vitroやin vivoなどの皮膚透過試験で検証することが必要である。この皮膚透過実験では、薬物溶液を用いた皮膚透過性の評価かプロトタイプ製剤として評価するかは研究の方針にもよるが、薬物溶液を用いる評価では直接薬物の透過性を評価できる利点がある一方、製剤では基剤中の薬物の拡散や基剤からの薬物の放出の影響が加わるため、薬物溶液で得られた皮膚透過性の結果と異なることが多い。そのため、薬物溶液に加えてプロトタイプ製剤を用いて可能性評価を行う事により、より評価の精度を向上させることができる。そこで第4回、第5回では貼付剤に用いられる粘着剤や吸収促進剤について解説し、製剤化のベースとなる成分について解説する。 

5.1 粘着剤や粘着付与剤
貼付剤は皮膚に貼ることにより薬効を発揮する製剤であることから、貼るための粘着剤や粘着付与剤は非常に重要な添加剤である。パップ剤、テープ剤ともに基剤の主成分として前者は水溶性高分子を、後者は油溶性高分子を用い、更にその他の添加物も加えて最終製剤としている。パップ剤とテープ剤の大きな違いは、基剤中に水分を含むか含まないかである。第1回で述べたように初期のパップ剤はカオリンを用いた泥状の製剤だったが、現在はポリアクリル酸ナトリウム、ゼラチンなどの水溶性高分子を主体としたパップ剤基剤をあらかじめ不織布などに展延し、プラスチックフィルムで被覆した後、あらかじめ使用しやすい大きさに裁断した成型パップ剤をパップ剤と称している。このパップ剤に用いられる主な水溶性高分子を表2に示す1)

表2 パップ剤の代表的な基剤、粘着剤成分

 

 

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執筆者について

山内 仁史

経歴

1981年第一製薬株式会社(現第一三共株式会社)に入社。研究所 製剤研究センター配属となる。株式会社ディ・ディ・エス研究所、埼玉第一製薬株式会社研究部に出向し、その後ニプロパッチに転籍。研究開発部長、ビジネス開発部長、春日部工場長を歴任。ニプロファーマ株式会社品質保証部参与を経て、現在は公益社団法人日本薬剤学会事務局顧問。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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コメント

山本 昭夫 / 2023/12/27

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