再生医療等製品の品質保証についての雑感【第52回】

2023/08/11 再生医療

水谷 学

前回に引き続き、よりリーズナブルな工程およびバリデーションの設計を、本稿より考察をする。

第52回:バリデーション設計の考え方 (8) ~ より簡便にバリデーション設計できる開発とは? (2)

はじめに
 本稿でも、前回に引き続き、よりリーズナブルな工程およびバリデーションの設計を考察していきたいと思います。前回では、機械操作によるCMC実施が最も簡便にバリデーション設計を構築できる手段とご紹介しました。一方で、細胞加工の事業者が培養の機械装置を開発することは困難です。そこで、汎用(市場で紹介される)機械装置の導入を検討することになると考えますが、どのように進めればよいのかを考えてみたいと思います。あくまでも数多の考え方における1つの雑感であり、違和感が生じましても、笑って読み飛ばしていただければと存じます。

● 汎用の機械装置における根本的な課題とは
 培養の自動化については、現在、いくつかのメーカーより、汎用の機械装置の入手が可能ですが、そもそも、現状の幹細胞培養技術においては、この「汎用」というのが非常にくせ者だと思います。自機関での開発が困難なので、開発できるメーカーより調達することは至極当然なのですが、そもそもGMP対応の装置は、原則として、目標の品質を達成する要求(URS)を達成するために、適切なデザイン(仕様決定)が不可欠です。すなわち、専用のURSで、専用の機械装置を設計することが前提です。
 多くの汎用の機械装置は、一見培養工程の要件を満たしていそうなものでも、「特定の要求に沿った仕様が満たされている」のみで、実際には、「要求されなかった事項が仕様として満たされていない」のです。ここで満たされない仕様は、医薬品製造のCHO培養のように、共有化が容易な製造技術であればそれほど顕著ではない(是正可能)と考えますが、細胞加工品製造においてはそうではないと認識します。

 余談ですが、現在多く用いられている、市販の安全キャビネットや炭酸ガスインキュベータなども同様の考え方で準備すべきと考えますが、世の中ではそのような機械装置が、「GMP対応」と称して売り出されていることがあります。これらは、機器校正やトレサビリティに対応していることで、売り文句としてそのような表現になっているのですが、本来、GMPに対応するということは、特定の製品を製造する目的のURSに合致していることだと思いますので、筆者としては非常に違和感を覚えます。まぁ、その売り文句だけで安直に購入を進める細胞加工の事業者の方がよろしくないのでしょうが...

 

 

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執筆者について

水谷 学

経歴

大阪大学 大学院工学研究科 講師。
1997年群馬大学大学院工学研究科博士後期課程を中退。国立循環器病センター研究所生体工学部にて生体適合性材料の研究を行った後、株式会社東海メディカルプロダクツにて循環器用カテーテルの開発および製造に関わる。2004年より株式会社セルシードにて再生医療に係る開発および品質保証を担当し、臨床用細胞加工物の工程設計や細胞培養加工施設の設計と運用を実施。東京女子医科大学での細胞シート製造装置開発を経て、2014年より現職。細胞製造システムの開発に従事。工学研究科の細胞製造コトづくり拠点において、細胞製造コトづくり講座(社会人教育)および標準化・規制対応に関わる共同研究を担当。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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