新・医薬品品質保証こぼれ話【第32話】

考える力と行動力。
執筆者の連載をまとめた書籍を発刊「医薬品品質保証のこぼれ話」
考える力と行動力
“よく考えて行動する”、このことは、誰もがその重要性を理解し、日常、あらゆることに対処する際に多くの人が自然に行っています。ただ、その一方で、いろいろな局面において、“考えが足りなかった”と反省することも少なくありません。そこで、今回は改めて、“よく考えて行動すること”の大切さについて考えてみたいと思います。
今、様々な分野で、若い世代の方が素晴らしい活躍をされています。中でも、メジャーリーグで投手と打者の二刀流で数々の記録を打ち立てている大谷翔平さんと、前人未到の八冠に迫る勢いの将棋の藤井聡太さんの活躍は、桁外れで際立っています。こういった若い世代の歴史に名を残す快挙は、国内外の多くの人から圧倒的な支持を得て、この不安定な時代において一服の清涼剤となり、多くの人に元気を与えています。これまで連綿と続いてきた野球や将棋の世界において数々の実績を残し、天才や名人と言われた方々でさえ成し得なかったことを、彼らは何ごともなかったかのように淡々と成し遂げています。
こういった、ずば抜けた才能を発揮する彼らは、他の人と何が違うのでしょうか?勿論、生まれ持った才能や、幼少時の環境などが関係していることは否定できませんが、それ以外の要素としてどういったことが考えられるのでしょうか?
これに対する答えは簡単ではありませんが、“考える力と行動力”が人並み外れて勝っている、ということが一つ挙げられるのではないでしょうか。“考える力”、もっと言えば“考え抜く力”、とその結果得られた事を実行に移す力、つまり、“行動力”、この二つが桁違いに優れているのではないかと思われます。また、そういったことを可能とするための自己管理能力、すなわち、節度のある日常生活の実践や巷溢れる誘惑から距離を置くことなど、“自らを律する”といったことにも彼らは長けていると推察されます。
打者としての大谷選手は、空振りやファールチップのあと、スイングの正しい軌道を念入りに確認し、次に投手が投げるボールに備えます。藤井棋士は、勝ち敗けにかかわらず、対戦のあとの棋譜を冷静に振り返り、不利な局面を招いた悪手の確認などを行います。こういったときの彼らの表情は真剣そのものであり、自分に足りないものを見つけ、次は同じ失敗をしないという強い意思が伝わってきます。このように、状況を客観視し、今、自分に何が欠けていて何が問題なのかといった観点から考え抜き、研究し、改善策を考え、それを試す。つまり、彼らは、“徹底的に考え抜いて得た対策を実行する”といったことを日常的に行い、習慣化していると考えられます。
上に述べた彼らが実践している対応の流れの基本は、いわゆる“試行錯誤”であり、そのこと自体は多くの人が心掛けていることと変わりありませんが、おそらく、その“レベル”が彼我で雲泥の差があるのでしょう。上記のように、自らを律し、体力や精神面の維持向上をはじめ様々な点において努力を重ね、野球、あるいは将棋への集中力を最高の状態に維持しているのではないかと思われます。
“よく考えて行動する”ことは、上記のように、個々人の様々な能力や技術の向上に有効であるだけでなく、我々が日々に取り組む医薬品の製造や試験検査の業務を的確に遂行する上でもとても大切です。製薬工場における多岐にわたる製造工程、また、数々の試験検査においては、日常、様々なトラブルやミスが発生しますが、対応を誤ると違法製造等の大事に至ることがあります。トラブルやミスが発生したときの対応手順はSOP(標準作業手順書)に規定されている場合もあれば、内容によっては手順が定められていない場合もあるでしょう。
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