新・医薬品品質保証こぼれ話【第3話】

人員配置と品質システムの構築

医薬品の品質を確保するために、製造や品質管理の業務内容に見合った人員を確保することは当然であり、その重要性は広く認識されているところです。改正GMP省令においては第6条(職員)第3項に「製造業者等は、製造・品質関連業務を適切に実施しうる能力を有する人員を十分に確保しなければならない」と規定されています。しかしながら、ここ数年の後発医薬品の自主回収や業務停止に係る、法令の不遵守を伴う重大な品質トラブルの原因の一つとして“人員の不足”が指摘され、改めて適正人員の配置に関し、確認と必要な是正が求められているところです。今回はこの課題に関し、私なりに考え方を整理させて頂きます。

“適正人員の確保”に関する最近の行政からの具体的な指導としては、令和3年7月2日に発出された二課長通知「医療用後発医薬品の承認審査時における新たな対応について」(薬生薬審発 0702第5号、薬生監麻発0702 第5号)の「記の2.製造・品質管理体制の確保」に示されている次の記述がありあります。「・・・適合性調査においては、当該申請品目の製造所における、製造品目数、製造数量等に見合った製造・品質管理体制・・・。具体的には生産計画及びその立案プロセス(職員の増員や設備強化の計画を含む)、医薬品品質システムの照査(マネジメントレビュー)の結果等により、製造品目の追加に伴う製造所の人員配置の状況とその妥当性を確認する・・・」。

この通知は昨年相次いで発生した後発医薬品の不祥事を踏まえ、今後の承認審査に際して製造・品質管理体制を確認することを明示し、その対応の要点を解説したものですが、要は、様々な要因を考慮して必要な人員を定め、その確保と配置に努めることを促すものです。人員配置に際し考慮すべき点が具体的に分かりやすく示されており、企業側にとって大変参考になるものです。ただ、実際にはここに示されている考慮点のほかにも念頭に入れるべき点が多々あり、また、各企業の事情に合わせた対応も求められることから、この課題は簡単ではなく、非常に難しい問題として理解する必要があると考えます。

先ず、人材の確保に関しては大手企業と中小企業では事情が大きく異なり、中小企業においては適正な人材の確保(採用)そのものが難しいことを考慮する必要があります。人材確保には育成が伴うとはいえ、ポテンシャルの高低により採用後の育成に要する労力、時間、経費といったことも変わってきます。日本の製薬企業の多くを占める中小企業にとっては、先ず、この点において不利な状況に置かれていることを認識しておく必要があります。この一点をとっても人員の確保・配置は単純、一律な考えの下に進められるものでないことは理解されるでしょう。次に、業務に対応する職員の数を決める場合、基本的に職員の能力(知識、経験など)を考慮し、「業務の難易度×量(A)」に「職員数×能力(B)」を対応させる必要があります。ここで、同じ業務(質と量において)の遂行を前提に、Bの職員数は知識・経験・熱意などからみて“業務遂行力”の高い職員であれば2人で済むところ、そうでない場合は3人必要となることもあるでしょう。
 

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