新・医薬品品質保証こぼれ話【第1話】

2022/04/15 品質システム

連載記事、医薬品品質保証こぼれ話が新スタート!

品質への影響と違法性判断

3月末(2022年)、共和薬品に対し、第二種医薬品製造販売業の10日間の業務停止の行政処分が下されました。また、医薬品製造業に関しては、三田工場に33日間の業務停止、鳥取工場に製造業務及び法令遵守体制に関する改善命令の処分が行われました。理由は承認書に記載のない添加剤の使用など承認内容と実際の製造記録の記載内容との齟齬や、変更管理の不備、記録の虚偽記載などとされており、昨年来の後発医薬品企業数社の行政処分の理由と基本的には共通すると考えられます。ただ、今回の行政処分においてはこれまでと異なる点が一つあります。それは“安定供給”への配慮です。具体的にはアルファカルシドール錠の3品目について欠品等の懸念から行政処分対象から除外され、製造販売の継続が容認されたという点です。

このことは現在の深刻な医薬品不足への影響を最小限に留めるという点において好ましい措置であると同時に、“品質(=有効性、安全性)に問題ない”と判断される医薬品を廃棄(=医薬品ロス)せず、医療資源を有効活用するという観点からも意義のある対応と考えられます。ただ、添加剤に関してであっても、承認書に記載のない製造方法の実施は承認事項の逸脱とみなされ、基本的には自主回収の対象となることから、今回の措置はあくまで緊急時の特例的な判断と理解されます。これに関しては、回収基準の特例的な運用についての指針などがあれば、対応もしやすくなるのではないでしょうか。

次に、本事案の指摘の一つである承認書に記載のない添加剤の使用に関して、少し考察を試みたいと思います。この指摘は、打錠に際し外部滑沢剤として使用されている添加剤(ステアリン酸マグネシウム:ステマグ)が製造販売承認書に記載されておらず、薬機法に抵触するとの判断によるものと思われます。本事案においては、過去の対応経緯に見られる違法性なども踏まえ、最終的に業務停止に見合う重大な法違反と判断された模様です。そこで、ここでは、打錠に際する外部滑沢に際する滑沢剤(ステマグ)の使用と承認書における記載という点のみに着目し、共和薬品の事案とは切り離して、一般的な見地から考察を行いたいと思います。

打錠障害を防止するために外部滑沢法により、ステマグのような滑沢剤が使用されることは一般的なことですが、この工程が承認書に明記されていない場合、その理由としては、次のようなことが考えられます。①バリデーション結果から外部滑沢は不要と判断された。②外部滑沢が必要と判断されたが、打錠時の外部滑沢は一般的であり、かつ微量であることから承認書に記載するほどのことではないと考えられた。

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執筆者について

浅井 俊一

経歴 1974年ロート製薬入社。品質管理・薬事・品質保証の各業務にそれぞれ7年・15年・16年間従事。退職後、2018年まで中国の原薬工場および国内受託企業において、改善・人材育成を含む品質保証全般に携わる。
中国での活動に、「新薬事法下の日本の医薬品品質保証体制」(2009/上海),「日本に輸出するための原薬品質の要件」(2017年/杭州)などの講演や、北京CFDA(現, NMPA)主管「医薬経済報」への「中国原薬の品質確保の視点」の連載(2012年)などがある。
取り組みテーマは「製薬工場のヒューマンエラー対策」,「中国等の海外原薬の品質と安定供給の確保」,「GMP記録の信頼性確保」,「組織コミュニケーションの活性化」,「作業者のモチベーションの確保」など。
著書に「改訂版GMP教育訓練マニュアル」(㈱じほう、共著),「3極対応/試験検査室管理実践資料集」(㈱情報機構、共著)などがある。
元,日薬連品質委員会常任委員。元,日本OTC医薬品協会品質委員会委員長。元日薬連CSV検討会メンバー。 薬剤師。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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