【第37回】Operational Excellence 実行の勘どころ 、“変革推進、品質は儲かる”

「自分の業務を理解する」について。
自分の業務を理解する
「Operational Excellence実行の勘どころ ー変革推進、品質は儲かるー」の中で、「自分の業務を理解する」についてお届けします。
第36回は、現場オペレータと管理者のギャップについて紹介しました。プロジェクトを実施するとき、何故現場メンバーは無言の抵抗をするのか。そもそも現場オペレータと管理者には、持っている情報と役割が異なる、そして業務の視野(Perspective)が異なると解説しました。その上で、平成・従来型のやり方から、令和型の新しいアプローチはどんなものかを、私の事例で紹介しました。会社や組織の方向性を朝礼やシフトミーティングで直接語り、単にお願いや指示するだけではなく、一緒に考え、アイデアを出すこと、これにより職場の雰囲気や協力体制が向上したと前回お伝えしました。一歩進みましたが、十分ではありませんでした。
図37-1の騙し絵を見てください。これをパッと見て、何に見えるでしょうか。鉤鼻(かぎばな)の老婆に見えますか、後ろを振り返ろうとしている美女に見えますか。人は先に見えたものが優先され、脳に記憶されるようです。一度認識したものを、新しい見方にするには、脳に新しく言い聞かせなければなりません。結構、大変です。思い込みと直感というやつです。

【自分事として業務を捉える】
一度脳に入った情報を変えるのは、結構大変なのです。特に人に言われたことは、どこかで納得していなかったり、やらされ感があったりします。現場メンバーに直接語り、変革に参加してもらうように一緒に考えることは一定の成果となりました。職場に良い変化が現れたのは事実です。しかしながら私が現場に行かなくなったら、一緒に考えるのを止めたら、たぶん元の状態に戻ってしまったでしょう。
脳科学の分野を勉強する機会がありました。人から言われて動くのと、自発的に行動するのでは仕事の上でも効率が違います。自分で納得して、楽しんで仕事に取り組むとドーパミンが出ます。やる気や幸福感を得られ、さらに脳が活性化し、何事にも前向き、良いスパイラルとなります。主体的に考え、自分の意思で行動することは長続きします。
キーワードは、「自分事」、「自発的」なのでしょう。人は報酬だけで動くものではなく、やりがいや、使命感、責任感から動くとの研究もあります。ステップバイステップではありますが、現場メンバーが納得し、自分達で自発的に行動できる仕組みづくりを考えてみました。現場に近いマネージャーや現場リーダーの方々の協力と努力が有効だったことは言うまでもありません。
現場への支援とアプローチの方法は図37-2のようです。まずはマネージャー側の目標達成のために、意見を押し付けないこととしました。現場ができることから取り組んでもらう仕組みです。特に医薬品製造では、作業を焦って品質を損ねたり、逸脱を拡げたりしては本末転倒です。作業の安全(Safety)・品質(Quality)・法令順守(Legal)は最優先です。無理な作業計画や間違いが判明した場合は直ぐに方向転換することを奨励しました。正しいことであれば朝令暮改の指示もありです。現場・現物・現実の3元主義を重視し、思い込みや、これまでの知識と経験の中で対処しないことにしました。特に現場を離れて何年も経つマネージャーよりは、現場リーダーの意見やアイデアを重視する。途中であまり口を挟まず、私が指示するのは「最終ゴールと期日」のみとしました。相談があった場合には丁寧に対応します。一緒に考えることもしますが、方向性や結論は現場に任せるようにしました。

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