【第35回】Operational Excellence 実行の勘どころ 、“変革推進、品質は儲かる”

品質は儲かるについて。
「品質は儲かる」について
第34回では、プロジェクトを始める前に、まずは自分の仕事を整理整頓しましょうと紹介しました。プロジェクトのスタートは、今の自分の仕事を棚卸し、整理と整頓することから始めることをお勧めしました。実はこれをうまくできる人と苦手な人がいます。1つの業務の判断に時間がかかっていたり、必要以上に考えていたりする人がいます。丁寧に間違えなく行うことは大切ですが、「そこまで必要なの」との自問と棚卸しは有効です。心の準備も含めて1か月くらいすると、本格的にプロジェクトに向き合える状態となります。これが変革(トランスフォーメーション)を行う環境を整えるという意味です。
例えばですが、リーンシックスシグマのグリーンベルト(プロジェクトリーダー)の場合は業務時間の約30%(週1.5日)、イエローベルト(チームメンバー、オンコールメンバー)の場合は10~20%(週0.5~1.0日)程度をプロジェクトに使ってくださいと話しています。具体的な時間を提示すると、できるできないも含めて、考えてもらうことができます。その上で仕事を整理することができます。本当にやるべき業務は何か、重複や属人的業務は何かなど、考えるだけでも業務効率改善の第一歩となります。
【価値(Value)】
「何故、変革(トランスフォーメーション)を行うのか」、「何故、業務改善や生産性向上を続けるのか」、「何故、改善活動やプロジェクトに参加しなければならないのか」については、プロジェクトの最初にクリアにしておきます。
会社や組織のビジョンやミッション達成のため、医療機器や医薬品会社の場合は、カスタマーである患者さんや医療従事者のためにという場合もあるでしょう。一方で大きな目標やビジョンは、日常業務から少々が飛躍しすぎている場合があります。新薬開発や新製品上市を予定通りに行う場合は、直接的に患者さんのためになりますが、工場やGMP上の業務では、患者さんのQOL(Quality of life)や価値向上にまでは遠いです。
「価値(Value)」とは何かと話をしても、ピンとくる人とこない人がいます。価値の定義と感じ方は人により異なります。工場の生産ラインや生産計画、品質保証や品質管理を担当する方々の場合、変革プロジェクトは、担当する業務プロセスや、GMPに沿って身近に感じられる価値にすると良いです。価値は押し付けるものではなく、ワークショップなどを開催し、参加者で見つけることもよいでしょう。街のラーメン屋や定食屋の場合、「早い、安い、美味い」は顧客が求める価値です。自分の業務やプロジェクトについても、一歩上の目線で、客観的に価値について考え、価値を共有してから変革をスタートさせると良いです。
実際には、価値を考える ⇒ プロジェクトをスタートさせる ⇒ 価値を考え直す ⇒ プロジェクトを進める、などプロジェクトを進めながらでも、価値(や目標)を修正・アップグレードしながら進めることもお勧めします。
【品質は儲かる】
会社が利益を出し、持続的に発展することは、従業員にとって良い事です。新製品開発や次の投資、雇用の安定にもつながります。この点は疑う余地がありません。そこで最近、特に工場や品質部門、スタッフ部門で働く人とプロジェクトを行う場合、「品質は儲かる」ということをキーワードに伝えています。前回の「価値(Value)」に続けて2つ目のキーワードが「品質は儲かる」です。
これは皆さんの扱う業務は、実は会社の利益の源泉であるという意味です。勘の良い方は、なるほどと思われたはずです。品質改善は会社の利益に直結するのです。会社の利益のために、会社の持続的発展のために業務プロセス改善、変革を行うのです。

私は過去にマーケティング部や営業部門に所属していたので、会社のトップラインとボトムライン(売上と利益)について毎月の部長会に参加し、報告していました。新製品のタイミングや大型受注は、会社の売上と利益に直結します。顧客に近い、会社のフロントラインの業務の場合、会社の売上と利益には敏感になります。営業職の場合、工場からの出荷価格(営業原価)を基に売上金額から固定費と販売管理費を引き、営業利益を算出することができます。
一方で工場の生産ラインでは常にコスト削減を求められますが、営業ほど単純にコスト計算をすることはできません。またコスト削減を行っても、会社の利益に実際どの程度貢献しているかは明確に示されません。リアルタイムに明確にできないところが難しいのです。
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