再生医療等製品の品質保証についての雑感【第50回】

2023/06/09 再生医療

水谷 学

前回に引き続き、『VMPのようなもの』について、雑感を述べさせていただきます。

第50回:バリデーション設計の考え方 (6) ~ バリデーションマスタープラン? (2)

はじめに 
 今回は、前回お話しした『バリデーションマスタープラン(VMP)のようなもの』について、薬事の手順において、それぞれの技術文書が承認申請においてどのような位置づけとなるのか確認していきたいと考えています。

● 時系列的に相関する技術文書は?
 『VMPのようなもの』の作成が必要となるのは、以前(第48回)にお話しした通り、製品開発(治験前)の段階となります。製品開発の後半は、製品の妥当性検証であり、設計された製品の安全性と有効性を評価するための、非臨床試験および臨床試験(治験)が計画されます。治験製品は、実施される非臨床・臨床試験の結果が製品のライフサイクルを通して適用できるように、承認後製品と同等性を確保しておく必要があります。そして、その規格および品質基準は、CTD第3部(モジュール3)の品質に関する文書にて定義されます。
 ここでCTDモジュール3文書は、図に示すように、治験製品の製品・品質標準書のような位置づけとなりますが、細胞加工製品の場合は、ここで決定された、原材料や重要工程に関する内容を承認後に変更することが困難であると推測します。そのため、CTDモジュール3文書が、あらかじめ承認後製品製造のスケールアップなどに伴う、工程変更に対応している必要が生じます。これが『VMPのようなもの』に相当します。

図 細胞加工製品開発における技術文書の準備手順イメージ

 すなわち、非臨床・臨床試験を計画する開発者は、そこで用いる治験製品が、承認後で適用される生産体制(商用スケール製造)における製品との同等性を有することを確認しておく必要があります。具体的には、製品開発計画における設計にて、予め重要原材料(細胞や培地など)および重要工程(バイオプロセス)について、製品のライフサイクルを通じて一貫できるように仕様決定を行い、その上で、製造承認後の商業生産を見据えた(商用製品と同等性のある)治験製品の工程設計および構造設備設計(URSその1)をとともに、製品の設計検証を実施します。また、製品の妥当性検証では、設計の妥当性が確認された治験用製品を用い、非臨床・臨床試験を実施し、その結果をCTDモジュール4(非臨床)およびモジュール5(臨床)にまとめます。
 このような手順により、CTDモジュール2書類(概括)においては、治験製品と同等性を有する商用製品が製造できる予測(根拠)として『VMPのようなもの』が活用でき、商用製品製造(スケールアップした商業生産)の構造設備設計(URSその2)の妥当性が示されると考えます。

 

 

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執筆者について

水谷 学

経歴

大阪大学 大学院工学研究科 講師。
1997年群馬大学大学院工学研究科博士後期課程を中退。国立循環器病センター研究所生体工学部にて生体適合性材料の研究を行った後、株式会社東海メディカルプロダクツにて循環器用カテーテルの開発および製造に関わる。2004年より株式会社セルシードにて再生医療に係る開発および品質保証を担当し、臨床用細胞加工物の工程設計や細胞培養加工施設の設計と運用を実施。東京女子医科大学での細胞シート製造装置開発を経て、2014年より現職。細胞製造システムの開発に従事。工学研究科の細胞製造コトづくり拠点において、細胞製造コトづくり講座(社会人教育)および標準化・規制対応に関わる共同研究を担当。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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