医薬品の外観目視検査における要求品質の明確化のために【第28回】

2023/04/14 品質システム

注射剤の検出可能な異物サイズとは。

注射剤の検出可能な異物サイズとは

1.注射剤の検出可能な異物サイズとは1.1 厚生科学研究(1975年度、1976年度)での記載
1.1 検査項目の設定に先立って
 50~75μmの粒子の異物検査の検知率は肉眼の場合も、機械の場合もかなり小さいと記載されている。肉眼検査において、偏光を利用すると検出率は向上するが、それよりもアンプルを回転し、上下より光を当てる方法が最も効果的である。しかし、これでも不完全であり、標準異物の種類により異なる。機械検査の場合は感度を変えることにより、検知率を高めることはできるが、良品を不良品としてしまう比率も高くなる。したがって感度を上げて不良率が高くなっても検知率を高め、不良部分を肉眼検査で検査することにより、検査精度を上げることが可能になることが報告されている。
しかし、不良サイズの基準が明記されている訳ではない。

1.2 日本薬局方技術情報(JPTI)2006での記載
 目視検査で検出できる異物の大きさ(注射剤)は、以下のように紹介されている。
① 異物数が5~10個/2mLの標準サンプルを用いた4社での熟練者による検査結果では、150~200μmの異物検出率は100%であるが、50~80μmになると黒色異物では平均97%に対し、半透明異物では60%となり、異物の種類により検出率が非常に異なる。
また、未熟練者では、50~80μmの半透明異物では熟練者の約半分の30%に低下する。(昭和51年度厚生科学研究報告、p235-246)
② J.Z.Knappらは、熟練検査員が拡大鏡を使用しないで検査を繰り返したとき、70%の確率で検出できる異物の大きさは100μmと報告している。
Inventory and measurement of particulates in sealed sterile containers.16:J Parenter Sci Technol. 1983 Sep-Oct; 37(5):170-9.Knapp JZ, Zeiss JC, Thompson BJ, Crane JS, Dunn P.
 ここでも、不良サイズの基準が明記されている訳ではない。

1.3 USP<1790>注射剤の目視検査での記載
 USP Pharmacopeial Forum 41(1)において、USP <1790> VISUAL INSPECTION OF INJECTIONSが公開されている。
 全体を通して、注射薬に関する目視検査の新たな一般的ガイダンスを提供している。主な焦点はヒトによる目視検査に関する記述であるが、半自動化及び自動化された方法への戦略についても議論されている。
 また、検出と排除についてだけではなく、汚染を防ぐという必要性の観点から、製造時の環境設定、プロセス設計、デザインを通した製造の全体的な戦略についても触れられている。
 検査基準を確立するために、人間の能力の限界を把握することも重要であるとしている。50 μmが人間の視覚の閾値と考えられているが、そう単純に考えることは出来ない。なぜならば、色・形状・密度によって大きく変化し、目視検査の結果に大きな影響を与えるからである。
 このガイダンスにおいては、「粒子の大きさがおよそ100~500 μmであれば、形状にかかわらず検出確率が標準曲線に乗る。」、「繊維状のものは一般的には500 μmより大きい。」等、その他多くの基本的事項を学ぶことが出来る。
 ここでも、検知の限界や、サイズと検知率の関係については記載されているが、不良サイズの基準が明記されている訳ではない。


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執筆者について

新井 一彦

経歴 C&J 代表
化学系企業にてバイオテクノロジーを利用した医薬品の探索、開発研究に従事。その後、開発医薬品(無菌製剤)の製造工場立上げに製造管理者として関わりGMP組織体制、基本構想を構築した。
平成17年の改正薬事法完全施行に合わせ、新たに製造販売業を取得するため某ジェネリックメーカーの設立に関与。取締役信頼性保証本部長として総括製造販売責任者の責務を担った。
現在、C&J 代表として、講演、執筆、国内外のGMPコンサル業務活動を推進。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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