医薬品の外観目視検査における要求品質の明確化のために【第27回】

2023/03/24 品質システム

外観検査基準の設定について。

外観目視検査項目

1.外観検査基準の設定
 検査項目、検査方法が決定したら、その工程毎にその検査基準を設定しなければならない。各工程でどの様なものを不良とするのかを明確にしないと、検査する人の判断基準により不良品を流出させたり、良品を無駄に不良排除してしまうことになる。
 表示事項の検査であれば、定められた内容通りの表示であるか、また印字の検査であれば、設定された内容(製造番号や使用期限等)が正しくかつ誤認識されない(欠落、つぶれ、かすれがない)ことを確認することになる。
 また、受入検査(原料・資材の他、委託製造製剤も含め)では、あらかじめ相手先(供給元)との取決めを行うことで供給開始後のトラブルを防止できる。色見本、標準見本、限度見本等を活用することが両者合意しやすい。尚、色見本、標準見本、限度見本は、時間とともに変化するものであり、それぞれの作製日(承認日)、承認者を明記した取決め書を交わし、定期的に更新しなければならない。

1.1 検査項目の設定に先立って
 外観検査というと、最終製品の検査をイメージすることが多いようであるが、原料・資材、中間工程品についても外観検査としての意識を高めるべきである。担当は異なっても、外観検査に対する考え方、方針は会社として統一すべきである。会社として、品質方針を明確にするとともに、外観検査を重要視していることを宣言したい。

2.日本薬局方に基づく検査基準の設定
 製剤の異物検査(微粒子試験も含め)については、日本薬局方に①眼軟膏剤の金属性異物試験法(17局、6.01)、②注射剤の不溶性異物検査法(17局、6.06)、③点眼剤の不溶性微粒子試験法(17局、6.08)、④注射剤の不溶性微粒子試験(17局、6.07)、⑤点眼剤の不溶性異物検査法(17局、6.11)の記載がある。
 検査基準を決定する際には、これらを参照し、確実に排除すべき異物サイズ、内容を不良見本として作製し、教育訓練とともに日常検査開始前の確認にも使用する。しかし、以下に記載の通り、日本薬局方の注射剤に関する異物基準は曖昧な表現(たやすく・・・、明らかに・・・)となっており、関連情報も考慮して各社で決定しなければならないのが実情である。医療現場からの品質情報(苦情等)も大いに参考にすべきである。すなわち、いくら自社で異物サイズ基準を設定しても、医療機関等からその基準よりも小さな異物に関する苦情提訴が多発するようであれば、その基準は以上で受け入れられていない基準となるため、基準の見直しが必要になる場合がある。
 残念ながら、固形製剤に関しては、異物検査試験が収載されていないので、自社基準を設定しなければならない。


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執筆者について

新井 一彦

経歴 C&J 代表
化学系企業にてバイオテクノロジーを利用した医薬品の探索、開発研究に従事。その後、開発医薬品(無菌製剤)の製造工場立上げに製造管理者として関わりGMP組織体制、基本構想を構築した。
平成17年の改正薬事法完全施行に合わせ、新たに製造販売業を取得するため某ジェネリックメーカーの設立に関与。取締役信頼性保証本部長として総括製造販売責任者の責務を担った。
現在、C&J 代表として、講演、執筆、国内外のGMPコンサル業務活動を推進。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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