【第24回】Operational Excellence 実行の勘どころ 、Analyze分析フェーズで何するの? (その5)

データ分析・グラフ分析の手順について紹介する。
この写真はエジプト、ルクソールにある王家の谷、ラムセスIV世の墓の中の壁画です。3000年以上前の壁画の色彩がここまで見事に残っているのは驚きです。王に何かを捧げる絵とエジプトの象形文字が見えます。
象形文字を分析し、じっくり読み取ると、物語が書いてあるとのことです。データ分析から手がかりを探し、原因を追究するパターンと同じではないでしょうか。夢が広がります。
【 データ分析から原因をみつける 】
データを入手したら、「安定性、形状、広がり、中心化、比較」の順にグラフ化し、データの傾向、特徴、違いを見つけることを第23回で紹介しました。見え方や気づきは、その変化の度合いが大きいか小さいかも含めて、この対象プロセスの実務担当者(業務を良く知っている人)と一緒にグラフレビューすることをお勧めします。必要に応じて追加でデータ収集をするのも、この段階です。
第24回は、「違いを検証する仮説検定」と「工程能力の算出」についてです。

【 違いを検証する仮説検定 】
データを比較するとき、原因をみつけるとき、何か基準や標準と比べてその違いや原因を探します。規格からのズレ、ターゲットから外れている、2つのグループで平均値が異なる、平均値は同じだがバラツキ度合いが異なるなどがあります。違いは分かるが、違いの大きさは人により判断基準が異なる場合があります。原因や違いを定量的に示したいのですが、人によりその判断基準が違うと混乱します。
そこで用いるのが「仮説検定」という方法です。データが等しい(同じである)か、異なる(同じでない)か、誰が計算しても同じ結果になる統計手法です。 <図24-1>はそれらの仮説検定の主な種類を図示化してみました。
目標値(ターゲット)に比較して合っている(同じである)かどうか、2つのサンプルの平均値の違い、サンプルのばらつき(分散)の違いなどを定量的に検証することができます。平均値や分散の違いはp-value(P値、確率値)という結果で表示されます。集めたデータの信頼性を95%とした場合、結果がp=0.03だと違いがある、p=0.10だと違いがないなどと判定できます。
新薬開発で薬の効果があるかないか、研究結果が人により解釈が異なると困ります。改善プロジェクトで生産時間が20-30%短縮されたが、目標達成と言えるかどうかなど、この仮説検定で効果検証をすることができます。
効果や違いを、統計的に有意差がある、明らかに他とは違うなどと検証するのが仮説検定です。
【 工程能力の算出 】
データ収集からデータ分析の紹介をしていて、「ところで、いつになったらシックスシグマの話が出てくるの?」、「バラツキを表すシグマ値はどこで使うの?」という質問を受けることがあります。シグマ値は半導体産業や非常に高い精度が要求される製造工程で用いられるKPIです。初期のシックスシグマ講習では、プロセスのバラツキ度合いを表す単位としてシグマ値(Z value)を用いていました。結論から言いますと、シグマ値という単位は一般的ではなく、工場の品質管理指標はCp/Cpk(工程能力指数)が多く使われています。CpはProcess Capabilityで工程能力、工程や製品のバラツキを表します。目標や規格に対する偏りを加味すると Cpk という指標になります。Cp/Cpkを用いるのが一般的です。(シックスシグマについては別途、基礎統計で学んでください)
Cp/Cpkを使っていない方は、プロジェクト企画書で設定したKPIを使い現状の工程能力を評価します。測定フェーズ、分析フェーズのまとめとして、現状を数値で評価するという意味です。プロジェクトの到達目標に対して、現状はどの程度であるのか数値で示すことが、このフェーズのアウトプットの1つ:工程能力を算出するです。
<参考>
- シックスシグマ(6 Sigma)とは100万回の中で3.5回程度の不良、バラツキのあるレベルを示します。
- バラツキを表す単位には標準偏差(Std)があります。Std=100といったときに、大きいのか小さいのか、元の数値レベルも合わせて伝えないと分かりません。Cp/Cpkは安定度合を示す数値なので、例えばCpk=1.33というと、100万個に6個と計算され、一般の工場の生産ラインであれば安定していると見なすことができます。
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