ゼロから学ぶGMP【第16回・最終回】
5-14 第18条 自己点検
医薬品の研究開発から製造販売に至るまで、どの場面でも自社内における第三者チェックを要求しています。研究開発においては、非臨床試験はGLP適用試験も含めて、それぞれ実施部門とは異なる信頼性保証部門を要求していますし、申請を目的とした臨床試験(治験)ではGCP監査部門の設置を求めています。これらは製造販売承認の申請に用いられるデータ等がそれぞれの規制に基づいて実施されていることを当局に対して保証することがその業務です。そういう意味では自己点検の一種と考えても良いと思われますが、これら申請に係るデータの保証は、例外もあるかもしれませんが基本的には製造販売承認の取得でその目的を達せられたものと考えられます。それに対してGMP省令に記載されている自己点検は品質に問題のない製品を継続的に製造するための方策の一つです。同様の意味を含めて、市販後の継続的監視が必要なGVP省令やGQP省令に規定されている業務においても、それぞれ第11条、第13条に自己点検が義務付けられています。GMP省令における自己は、言うまでもないことですが、製造所そのものであり、閉じられた世界である「製造所」の中で製造所自身の改善活動としての位置づけです。
GMP省令第18条には定期的に自己点検を行い、その記録を保管することを規定しています。また、施行通知には定期的な自己点検を行う際に、当該製造所における製品の製造・品質管理業務が適切かつ実効性をもって行われているかについて評価するための自己点検の対象事項が記載されていますが、その内容はGMP省令に記載されている項目すべてがその対象であることを述べているにすぎません。
法律上の立場に立てばGMP省令に記載されている事項はすべて重要であり、条文内容に軽重はないということを前提としているので、自己点検の対象となる事項はGMP省令条文すべてにわたる、というのがこの施行通知の記載内容に示されています。しかし、第1項にあるように、自己点検は定期的に行うことを求めています。これは常識的には1~2年の間に対象となる事項の自己点検を終了し、次のサイクル、すなわち次回の自己点検に入っていくようなイメージです。従って、対象となる事項の自己点検は少なくとも2年ごとに繰り返されることになります。このように少なくとも2年のサイクルにしておかないと、その間の潜在している問題点の把握とその解決についてタイムリー且つ適切に対応することが難しくなってしまいます。
5-14-1 自己点検の考え方
製造所で自己点検を実施するにあたっては製造所内での自己点検の考え方について共通認識を持つ必要があります。それは、自己点検の結果について、例えそれが厳しい指摘であろうと、製造所内の従業員がそれを尊重し、受け入れることです。議論を十分尽くすことは歓迎されるべきことですが、自己点検の結果を受けて改善等の行動を速やかに起こす意識が従業員になければなりません。そのような意識が希薄で、自己点検の結果を軽視するようなことが日常的では、自己点検のための自己点検、言い換えれば当局の適合性調査をクリアするためだけの作業になってしまいます。これには気を付けなければなりません。
5-14-2 自己点検の進め方
自己点検の進め方については、それぞれの製造所で手順書が定められ、それに従って進められますが、自己点検を実施するに際し、例えば年1回対象とすべき事項について網羅的に行うことは、効率の面から見てもあまりよい方法とは言えません。どの項目を対象から除くということではなく、軽重をつけることが効率よく自己点検を行うポイントとなります。自工場の「強み」と「弱み」を「過去の自己点検結果」や「規制当局や他社からの指摘事項」等の情報も用いて分析し、自己点検の対象事項の「重み」づけをして進めることが得策です。「弱み」を重点的に点検していくことが大切です。このようにして、定期的に自己点検を実施して行くことになりますが、その結果から次回の重点を置くべき対象を、また新たに設定し自己点検を実施することにします。これを繰り返していくことで、工場のGMPレベルの向上が図れます。この目的は一朝一夕には達成できませんが、愚直に進めていくことが目標達成には必要なことです。
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