医薬品の外観目視検査における要求品質の明確化のために【第14回】

2022/02/18 品質システム

医療機関にて発生する不具合について。

医療機関にて発生する不具合

1. 医療機関にて発生する不具合
 注射剤の製造工程や原料、資材、容器に由来する異物の他、医療機関、流通過程にて発生する不具合が異物苦情として提訴されることがある。アンプル開封やゴム栓コアリング、医療機関、流通過程での破瓶等が該当するが、潜在的なリスクとして十分に把握しておくことが重要である。

1.1 アンプルのガラス片混入について
 アンプルは、薄手のガラス管(ホウ珪酸-硬質ガラス)を成型したもので、薬液を充填した後、末端を熱(通常はガスバーナー)で溶融して閉じてある。特徴は、硬質ガラスは医薬品成分が吸着したり、逆にガラスの成分が溶出したりすることがほとんど無く(わずかにアルカリ分が溶出するが)、内容液との反応性がとても低いと言える。もちろん酸素などのガス透過性もない。また、バイアルに比べると低コストで製造可能である(バイアルに必須なゴム栓や、これを止めるアルミキャップも不要。)ので、単価の安い医薬品にも使いやすいと言える。
欠点としては、薄手のガラスを使っているため比較的壊れやすく、大容量にするには適さない(ふつうは20ml程度まで)点と、使用時に首の部分を折る時に、微量のガラス片が内容物に混入する可能性がある(加熱して溶閉しますので、内部が陰圧になっており、破片を吸い込む。)ことがある。
 そのため、医療現場から、ガラス片混入として提訴されることがある。  
実際に、Biol Pharm Bull. 2005 Dec;28(12):2268-70.には、臨床の場で、アンプル製剤からガラス片などの微粒子が混入されているとした報告がされている。アンプル開封時のリスクを丁寧に説明する必要がある。

「混注された栄養輸液の微粒子および微生物汚染」
 ガラス片などの微粒子が輸液とともに体内に入ると、静脈炎や臓器障害の原因になることが示唆されている。しかし、日本ではガラスアンプル入り薬剤が多く混注され、調製時や投与時にはフィルターを通されないことが多い。その理由として混注後の栄養輸液の微粒子・微生物汚染についての報告が少なく、フィルターが高価であるためであると考えられる。
 山口県の10病院から得た静脈栄養輸液バッグの残液(n=192)について、微粒子と微生物汚染について調べた。混注された平均薬剤数はそれぞれガラスアンプル入り3.38本、プラスチックアンプル入り0.79本、バイアル入り1.2本であった。残液1mL中の微粒子数の平均は直径1.3μm以上が960.9個、5μm以上が42.8個、10μm以上が6.4個、50μm以上が0.09個であった。直径1.3μm以上の微粒子数は薬剤を混注していない対照(n=7)に比べて有意に多かった(P<0.0001)。また、ガラスアンプル入り薬剤を4~13剤混注した群は、1~3剤混注した群より有意に多かった(P<0.01)。これらの微粒子はガラス片やゴム片であった。全ての残液各5mLの微生物検査では細菌・真菌は検出されなかった。

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執筆者について

新井 一彦

経歴 C&J 代表
化学系企業にてバイオテクノロジーを利用した医薬品の探索、開発研究に従事。その後、開発医薬品(無菌製剤)の製造工場立上げに製造管理者として関わりGMP組織体制、基本構想を構築した。
平成17年の改正薬事法完全施行に合わせ、新たに製造販売業を取得するため某ジェネリックメーカーの設立に関与。取締役信頼性保証本部長として総括製造販売責任者の責務を担った。
現在、C&J 代表として、講演、執筆、国内外のGMPコンサル業務活動を推進。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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