医薬原薬の製造【第19回】

2016/10/27 原薬

医薬原薬製造に使われる可能性のある装置で、技術動向を注視していく必要があると筆者が思う装置についてこれから述べたいと思います。筆者が注目している機器は、
  マイクロリアクター
  精密密度計
  PATとしての遠赤外分光器、ラマン分光器
などがあります。今回からは、数回に分けて、マイクロリアクターを取り上げます。
 
 
マイクロリアクターの特徴
最近マイクロリアクターは、原薬や原薬製造原料の製造現場に導入される例も増えているようです。そこで、マイクロリアクターがどんな特徴を持ち、どんな反応に適応され、どのように工場の製造現場に導入されるのかについて考えてみたいと思います。
 
まずそもそもマイクロリアクターはどんなものかについて説明しておきます。マイクロリアクターは、下の図で示すような細い流路の2液混合部と、混合液の除熱部からなっています。流路の径は、ラボ用のもので、0.1mm~0.3mm程度です。日立が開発したマイクロリアクターの仕様では、高さ0.15mmX幅0.25mmとなっています。
 
 
ラボ用の装置では、混合部はT字もしくはY字の流路だけとなっています。スケールアップ用の装置ですと、混合部は、2液をTあるいはY字路で混合した後、邪魔板を設けて2液の混合を促進しています。このような2液混合部は、化学業界で広く使われているスタティックミキサーと基本的に同じ構造です。スタティックミキサーは多くの原薬工場で蒸気と水をミックスして温水を製造する装置として使われています。その他流路中で2液をミックスする場合にはスタティックミキサーが使われます。(下図参照)

 
次にマイクロリアクターの特徴を述べて行きます。

1 反応は連続的である。
● バッチ式でA+B→Cの反応を行う場合、通常AかBの溶液を滴下するので、AかBのどちらかが過剰条件で反応が行われる。(ショッテン・バウマン反応のように両者を滴下する反応が例外としてある)一方連続反応ではAとBのモル比は常に一定である。
● 連続反応なので反応条件の検討が簡単に行うことができる。小スケール反応で、モル比、反応時間、反応温度などの反応条件は、溶液の注入速度を変えるだけで瞬時に行うことができる。

2 反応系がミクロである。
● 流路が細いので熱交換面積/体積が大きく取れる。反応熱のコントロールが容易に行える。
● 安定性の低い化合物を短時間で合成し、次の反応に供することができる。
● 2液の撹拌は非常に早く行うことができバッチ反応で局部的に反応が起きて発生するホットスポット現象を回避できる。ニトロ化合物など爆発性化合物の合成に好適である。
● 条件検討済みのマイクロリアクターを数多く重ねることで(ナンバリングアップ)反応条件を変えることなくスケールアップが容易に行える。
 
上記のようにマイクロリアクターの特徴は、反応系が連続的であること、反応系が小さいこと、の2点に集約されます。この2点についてさらに考察を進めたいと思います。まずは、反応が連続であることについて述べます。

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執筆者について

森川 安理

経歴 アンリ・コンサルティング 代表。
大学修士課程で有機化学を専攻後、1977年旭化成工業(株)入社。スクリーニング化合物の合成、プロセス化学研究に一貫して従事。この間薬学博士号取得。その後、医薬原薬の工場長を10年経験。工場長として、米国、イタリア、豪州、韓国の当局の査察および、制癌剤を中心にする治験薬の受託生産を経験。旭化成ファインケム(株)を2013年2月末退職。2013年3月より現職。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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