ゼロから学ぶGMP【第9回】

2016/09/01 品質システム

5-6 第9構造設備
5-6-1 概要
 構造設備に関しては、GMP省令とともに薬局等構造設備規則(厚生労働省令第80号、最終改正平成27年4月1日)にも記載があります。GMP省令第9条第1号には「構造設備は手順書に基づき、その用途に応じ適切に清掃及び保守が行われ、必要に応じて滅菌され、またその記録が作成され、保管されていること」と記載され、薬局等構造設備規則第6条第1項には「製品を製造するのに必要な設備及び器具を備えていること」と記載されています。その他、両省令に、表現は異なりますが、塵埃や微生物による汚染防止、交差汚染を防止すること等について記載されています。この構造設備要件に加えて製造所内における「ヒト」と「モノ」の動線を明確にしておく必要があります。
 一方、PIC/Sでは第3章、建物及び設備(PREMISES AND EQUIPMENT)の原則に「建物及び装置は、実施される作業にふさわしいように配置、設計、建造、供用され、保守管理されなければならない。それらの配置及び設計は、過誤のリスクを最小にするように意図され、交叉汚染、塵埃又は汚れの蓄積及び、一般的に、製品品質へのいかなる悪影響も回避するための有効な洗浄と保守管理を可能とすることを意図しなければならない」と記載されています。
 あたり前のことですが、これらの省令やPIC/Sは守るべき最低限度の基準を示していますので、製造所においては、取り扱っている製品の特性、無菌製剤か非無菌製剤か、また生物由来製品や再生医療等製品の製造を行っているか否か、等によっても必要とされる構造設備は自ずと異なります。
 またGMP省令第9条第5号には「飛散しやすく、微量で過敏症反応を示す製品等又は交叉汚染することにより他の製品に重大な影響を及ぼすおそれのある製品等を製造する場合においては、当該製品等の関連する作業室を専用とし、かつ、空気処理システムを別系統にしていること」と記されており、事例集に記載のとおりペニシリン類やセファロスポリン類等の抗生物質の製造にあたっては、過敏症反応のリスク等を考慮して、作業室の専用化や空調の別系統化などのハード的な封じ込めに加え、モニタリング等のソフト的な封じ込めの対応を適切に実施し、他製品への交叉汚染防止の措置を講じる必要があります。またステロイド剤や細胞毒性が強い抗がん剤等の「強い生理活性を有する製品等」の作業室についても専用化するなどの対策が必要です。
 PIC/S(PREMISES AND EQUIPMENT, Production Area3.6)でも同様の記載があります。
 構造設備、特に建物等の構造物については、不都合があった場合には改善するために、多大の時間とコストが必要となるため、設計段階から慎重に進める必要がありますし、また変更する場合にも、製品の品質に影響を与えかねない製造環境に対する影響を十分検討することが大事です。
 構造設備に関しては製造所の規模や取り扱っている製品等によりそれぞれ異なりますので一般論としてはこの程度にとどめて、製造所に共通の室間差圧、製薬用水設備及び倉庫管理について述べていきたいと思います。

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執筆者について

上田 泰生

経歴 1974年ミドリ十字入社、中央研究所配属。製剤研究部長、中央研究所業務部長を歴任。旧吉富製薬と合併後、信頼性保証部長としてGXP全般の監査を担当。その後2回の合併(三菱ウェルファーマ、田辺三菱製薬)を経る中で薬事監査部、品質保証部、薬制管理部を経験。2008年ニプロファーマ入社、本社品質保証部、城北工場品質保証部長を歴任。2013年退社。 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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