再生医療系若手技術者のための製造文書作成術【第7回】
「あなたが文書をつくる意味」
本稿は、これから再生医療に関わる若手技術者の方に向けた、製造文書を書くための具体的・実践的なTipsになっていました。初回から第6回まで、初心者の方は勿論ですが、今現在作成に携わっておられる若手の方なら、最後のポイントをチェックしてみるだけでも役に立つように心がけました。
第7回は、最終回として、文書を作る、書く作業の意味合いについて少し述べておきたいと思います。なんで最終回だけそんなに概念的なの、といえば、文書が書ける・作れるということはとても価値のあることにもかかわらず、個人的に、非常に軽視されている気がしているからです。
【文書ってなんだっけ】
社内でぐるりと見渡してみれば、文書というのはありとあらゆるところに存在します。
ビジネスの現場で言えば法務文書、契約書、稟議書などの重用文書類。IRや株主向けの報告書など外向けのもの。よく作成する企画書、提案書、議事録、依頼書などの他、ちょっとしたお知らせなどの掲示文書、回覧文書、社内報、などなど。そして、製造を制御する規格書から管理文書といった、今回の原稿で取り上げてきたものもあるでしょう。
これら文書は数あれど、第1回「文書を作る、その前にやるべきこと」で書いたよう、誰に、なにを伝えたいのかが異なるだけで、あとは「紙に伝達手段としての文字が書いてある」という意味では同じものです。これが業務を回していると言っても過言ではありません。
デジタル化が進んでも、この意味合いはあまり変わっていません。現実としてWordファイルひとつとってみても、プログラムを書く画面と異なり「印刷した時にどう見えるか」が最初の規定です。「どのサイズの用紙で編集するか」「フォントの印象やサイズはどうか」「余白はどうするか」なんて、デジタルデータだけを扱うなら、どうでもいいはずのことにこだわります。これは、「紙に伝達手段としての文字が書いてある」ファイルを作るアプリケーションだからですね。
ところが、この基本中の基本であるはずの「紙に伝達手段としての文字が書いてある」という本質的な意味合いを、忘れてしまう方がいます。コピペを多用する方です。
ほんの少し前、ビジネス書などでも言われていたのが「仕事を効率的に行うなら、一から書かずにコピーすればいいことはたくさんある」といった内容です。これはこれで一理あるのですが、これをしていいのは、自分で文書を書ける人間だけです。書けもしないのにコピペをすると、読む人間には意味が通らなくなります。これは間違いありません。
第1回のラブレターのたとえ話に戻れば、小説に出てきたラブレター文を、そのままA子さんに送るようなもので、これに気付かない女性はいません。コピペかよ、と言われて捨てられるのがオチです。
同様に「同じような公園の殺人シーンだから、前の著作からコピペしちゃえ」というミステリ作家がいたら、おそらく著作権の問題がなくてもファンに怒られるでしょうし、「状況の似たような裁判だから、判決文はコピペで」という裁判官(合議制ですからまずありえませんが)もいないのです。文書というのはどんなものでも、そのシチュエーションのもと、適切に作成するしかないものです(なおこれは「打ち間違えないように固有名詞や数字の入力をコピペで制御する」という予防措置とはまったく違う話ですのでご注意ください)。
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