ゼロベースからの化粧品の品質管理【第14回】

2021/11/01 化粧品

衛生管理に関する手順書で明確にすべき項目について、具体的な進め方について考える。

化粧品GMP手順書の作り方 ②衛生管理(2/2)

前回は構造設備のハード面を支えるソフト面について、衛生管理に関する手順書で明確にすべき項目について紹介させて頂きました。今回は、これらの項目の具体的な進め方について考えてみたいと思います。
衛生管理に関する事項は、a)原材料・資材の取扱い b)作業者 c)製造設備・装置  d)建物等 e)ヒト f) 排水 g)廃棄物 等幅広い範囲の話しとなってしまいますが、今回は構造設備に関係する『製造設備・装置』、『建物』に関連する事項に限定して、“何を行うのか”についてお話します。但し、建物や製造設備における“防虫防鼠”に関連する事項は別の回でお話します。

1.    構造設備に関する衛生管理の運営面の基本
衛生管理手順書では、GMPの基本の3原則における「汚染及び品質低下を防止すること」を具体的に説明できるような“管理の体制”、“管理の仕組み”、“実施したことのエビデンスである記録”を具体的に示すことになります。この場合、製造工程で発生する可能性のあるリスクを把握することから始めなければいけません。どこかの手順書をコピペするケースが多いと思いますが、自社の状況を踏まえたものでないと役に立ちません。次に、そのリスクの中で重要項目を特定することが必要です。例えば、製造工程の中でそのリスクが排除できる場合には、その管理レベルは現状レベルでも“当面は是”とすることが必要です。つまり、どこかの手順書に書かれているからと捉われてしまうことはナンセンスです。繰り返しになりますが、構造設備は既にある条件の中で多額の投資費用を掛けることはできないこと、原料の取扱いやバルクの取扱いで異物汚染のリスクを認識して知恵をだすことで、解決策は一様ではないと考えるからです。
ここで面白いお話を紹介させて頂きます。ある工場で、なかなか製造用水の微生物汚染の問題について、配管の構造面から解決できないとのことでした。そこで、その会社では、全ての製品に対して製造で使用する水は85℃で30分以上製造の前日に加熱し、密閉放置、放冷して翌日製造するとのことでした。化粧水製造においても同様です。バチルス類に対しては効果がないことを認識しているものの、通常の製品では問題は起きていないとのことでした。実にコメントし難い対応策ですが、構造設備の制約からはある程度しかたがない対応策かもしれません。但し、私ならば製造釜の殺菌方法としてはOKですが、製造用水については最終出口に0.45μmのフィルターの設置を推奨します。
 

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執筆者について

鈴木 欽也

経歴

1980年に㈱資生堂に入社。掛川工場で処方開発・生産技術開発を担当。ネイルエナメルのゲル化剤、色材の開発や調色に関するコンピューターカラーマッチングシステムを開発。他に高圧乳化、凍結乾燥、パーマ剤、ヘアカラー等の特殊技術開発にも従事。
その後、本社生産技術部で海外事業戦略、海外工場建設、生産技術移転、海外薬事対応の業務を担当した後、再び掛川工場でファンデーションやマスカラ生産の移管業務を担当、本社で海外原料・資材・製品調達の業務を担当した後、中国北京工場の取締役工場長として、工場建設とシャンプー、リンスの現地生産化や化粧品の工業会の業務に尽力。
帰国後、掛川工場技術部長、大阪工場技術部長を歴任、FDAの査察受け入れやEU原薬登録を実施。
また、㈱コスモビュティー執行役員 品質管理部長としてベトナム工場、中国工場を建設。現在、㈱ディー・エイチ・シーさいたま岩槻工場の工場長でメーキャップ製品の工場改修・立上げを実施した。2017年から中小企業診断士として、鋳造業、サービス業、建築業等の事業計画作成支援や企業の5S活動支援を実施している。
品質管理に関しては、米国OTC製品の化粧品業界で日本国内初のFDA査察を受け入れ、指摘事項ゼロ件での対応、ヒアルロン酸のヨーロッパ原薬登録・米国FDA登録、ヒアルロン酸の原薬工場棟の増設を責任者として推進した経験を持つ。
公害防止管理者(水質1種、大気1種)、中小企業診断士(埼玉県正会員)、FR技能士、ターンアラウンドマネージャー(事業再生、(一社)金融検定協会認定)、健康経営EXアドバイザー、ISO9001審査員補、2022年5月から(株)エコノス・ジャパン代表取締役

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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