省令改正案検討の経験からみるGMP省令改正のポイント【第3回】

2021/08/06 品質システム

第3条の3の第4号以降の解説、PQS実効性の監査のポイント、7月1日に発効したPIC/SのデータインテグリティガイダンスのデータガバナンスとPQSとの関係について考察する。

 改正省令が施行されました。引き続き、第3条の3の第4号以降の解説をします。また、査察や監査(以下、監査)を行う者のためのPQS実効性の監査のポイントに加えて、Columnでは、7月1日に発効したPIC/SのデータインテグリティガイダンスのデータガバナンスとPQSとの関係について考察します。 

資源の配分、定期的な照査及び所要の措置(第4号)
 第4号は以下を規定します。
 -    品質方針及び品質目標を達成するため、必要な資源を配分すること
 -    定期的に医薬品品質システムを照査し、その結果に基づいて所要の措置を講ずること
 課長通知から、これらの作業は製造業者等の代表者を含む責任役員の主導で行います。
 資源管理は品質方針の作業の一環(第2回参照)として、Q10の2.3章に記載されるとおり「経営陣は品質目標を達成するため、適切な資源及び訓練を提供しなければならない」とされます。資源とは何かは課長通知により具体的に書かれており、いわゆるヒト・モノ・カネであることは承知のとおりです。Q10で訓練を提供するとしているのは、単なる資源の数ではなく、品質目標を達成するパフォーマンスを示せる人材がどれだけ充てられているかという観点からです。
 定期的な医薬品品質システムの照査は、課長通知はQ10/PIC/S GMPにあるマネジメントレビューに相当するとしています。Q10(2.6章)のマネジメントレビューは、以下のとおりです。
  (a)  上級経営陣は、医薬品品質システムの継続する適切性及び
    実効性を確実にするためマネジメントレビューを通じ、
    医薬品品質システムの統括管理に対して責任を
    有しなければならない。
  (b)  経営陣は、…(略)…製造プロセスの稼働性能及び
    製品品質並びに医薬品品質システムの定期的なレビュー結果を
    評価しなければならない。
 製造プロセスの稼働性能及び製品品質のマネジメントレビューの概念をQ10から説明します。改正省令本文からこの稼働性能と製品品質も対象にするのが読めないところで、課長通知の定義解説によって省令の「照査」にはこれも含まれると解釈しなければなりません。Q10の3.2.4章をみれば理解できるところで、インプットとして監査結果と規制当局へのコミットメント、定期的な品質レビュー及び前回のマネジメントレビューからのフォローアップです。定期的な品質レビューは、製品品質の照査結果と重なる部分もあるので、それらは情報源です。経営陣や上級経営陣が目を通すことから、実際は製品品質の照査結果概要(=結論)を上げて、照査する形になると考えられます。個人的には重複を避けることは資源管理の観点から有効と考えますが、第11条の3で行うべきことと、本条で行うべきことにはそれぞれに目的があるので、本質を理解して切り分けることが求められます。マネジメントレビューのアウトプットは、製造プロセス及び製品への改善、資源管理並びに知識の獲得・伝播です。
 Q10で記載するPQSのマネジメントレビュー(4.1章)は、システムそのものに対する評価をいいます。Q10では継続的改善の対象として、製造プロセスの稼働性能及び製品品質(3章)と医薬品品質システム(4章)を分けて記述しているので、必然的にそのためのマネジメントレビューが切り分けられているという建付けになります。PQSに対するマネジメントレビューのインプットには、PQSの目的の達成に関する評価、業績評価指標の評価(詳細は、4.1章)ですが、システムのレビューには、同時にシステム運用時のモニタリングの結果が含まれます。詳細は4.2章を参照いただければよく、外的要因として規制の変化、内外要因として品質に関する問題事項の把握等があります。システムのレビューのアウトプットは、PQSの改善、資源配置/再配置、品質方針・品質目標の改訂等があります。
 

3ページ中 1ページ目

執筆者について

寶田 哲仁

経歴

㈱ファーマプランニング
製薬企業で品質保証業務を経て、PMDAにて審査等業務を経験
ICH Q9及びQ10他

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

11件中 1-3件目

コメント

この記事へのコメントはありません。

セミナー

2025年5月30日(金)10:00-16:30

バイオ医薬品の開発とCMC戦略

2025年6月16日(月)10:30-16:30~2025年6月17日(火)10:30-16:30

門外漢のためのGMP超入門

2025年9月10日 (水) ~ 9月12日 (金)

GMP Auditor育成プログラム第20期

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

株式会社シーエムプラス

本サイトの運営会社。ライフサイエンス産業を始めとする幅広い産業分野で、エンジニアリング、コンサルティング、教育支援、マッチングサービスを提供しています。

ライフサイエンス企業情報プラットフォーム

ライフサイエンス業界におけるサプライチェーン各社が提供する製品・サービス情報を閲覧、発信できる専門ポータルサイトです。最新情報を様々な方法で入手頂けます。

海外工場建設情報プラットフォーム

海外の工場建設をお考えですか?ベトナム、タイ、インドネシアなどアジアを中心とした各国の建設物価、賃金情報、工業団地、建設許可手続きなど、役立つ情報がここにあります。

※関連サイトにリンクされます