医薬品工場建設のノウハウ -プロジェクトの成功に向けて- 【第6章-4】

DQ/DRについて

製品の品質を適切に保証できる製造設備を構築するためのステップとしてDesign Review(DR)とDesign Qualification(DQ)は非常に重要なステップである
設備のバリデーションのそれぞれの活動は、設備に求める機能すなわちUser Requirement Specification(URS)を起点にして、リスクアセスメント、DQ、IOQ、PQ、PVへとトレーサブルに繋がっており、その初期の段階がDR/DQである。
DR/DQによってURSが設計に反映されているかどうかを確認し、不十分な場合は設計に追加するなどしてURSを実現できる設計にする。設計が確認・承認された以降は、ベンダーは納期を目標に一気に建築や製作を進めるので、この段階を慎重に取り組むことで、工事完了検査や工場出荷前検査(Factory Acceptance Test (FAT))で瑕疵が見つかり後戻りするなどというようなことを回避でき、結果として製品品質を保証できる設備が構築できる。

では、DR/DQを如何に進めるのがよいか?これを説明する。

DR/DQの進め方の説明と言いながら、URSの策定についてのお話から始まる。
多くのプロジェクトでは、フュージビリティースタディーでプロジェクトの実施が決定されると設備設計と見積調査が始まるが、この時点では設備の仕様はURSと言えるレベルまでのブレークダウンは出来ておらず、User Requirementのレベルで見積調査しベンダーを選定している。
理想を言えば、URSまでブレークダウンした引合書で見積調査すべきであるが、納期の制約もある為、上記のようになってしまう。
しかし、URだけではベンダーは設計を進めることは出来ないので、ユーザーはベンダー選定後(発注金額も確定後)に個々の設備、システム、装置についてURSを作成する。URSの作成では、ユーザーが機器の詳細仕様を指定する必要はない。対象の設備、システム、装置でどのような手順で何をしたいか?の詳細を明らかにすることが大事である。例えば、「溶媒を何リッター投入し何℃に冷却しながら何時間撹拌する」といった具合である。それを選定したベンダーと協議し、「では温度計の精度は・・・・冷媒の量は・・・・」などと詳細を詰めてゆきURSが出来上がる。ベンダーはURSの協議と並行して設計を進めているので、URSがまとまった時点ではURSを反映した設計図書がほぼ出来上がっていると考えられる。

もし、設備設計に反映することが難しいURSが見つかった場合は、URSを見直し、元になっているURを実現するための別の方法を検討しなければならない。場合によってはURSの実現をオペレータによる運用管理で行うということも選択肢として検討する必要がある。このような場合はURSも改訂することになる。

以上のような進め方には大きな欠点がある。
URSをベンダーと協議してゆく過程でURSのある項目の実現のために見積には無かったコンポーネントやパーツを追加する必要が生じることもある。何らかの追加や変更を行う場合は、工事・製作費用と納期への影響を考慮しなければならない。
このリスクを回避するためには最初の見積もり段階でURSを出来るだけ明確にしてベンダーに伝えることに他ならないが、多くの場合、定められたマスタースケジュールに間に合わせるために概略のURSで見積調査しベンダーを選定し納期の確定を急いでしまう。設備構築プロジェクトがスタートして、まだ先々の状況が見えていない中で時間をかけてURSを丁寧に作ることは勇気のいることであるが、そこは「急がば回れ」と考えて取り組みされることをお勧めする。

上記のURSの策定に伴う問題は別の議論預けるとして、URSが策定出来たらURSに対してリスクアセスメントを行い、結果としていくつものリスク低減策が提案される。これらの内多くはIQOQやPQでの検証項目となるが、設備設計に反映するものはDR/DQの対象となる。
昨今のICHやPIC/S GMPの考え方は、リスクアセスメントを重視している。リスクアセスメントの手法はFMEAを参考にした手法がよく用いられるが、発生確率、重大性、検出性等の評価点数付けに気をとられて大元のリスクの抽出をおろそかにしないよう注意が必要である。

 

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