医薬品GMP理解の第一歩【第8回】

2021/04/23 品質システム

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医薬品GMP入門~現場に生かせるGMP理解のポイントを初歩からわかりやすく具体的に解説します~
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1.はじめに

  今回は文書管理についてご説明したいと思います。新入社員の方などが文書管理と聞いて文書整理だと勘違いされることがありますが、もちろんそうではありません。文書管理とは文書を作成し、改訂し、承認し、さらに配布と保管を行うプロセスと言えます。本連載第1回では医薬品品質システムの基礎としてISO9001の要点を説明しましたが、この際にも文書化(Documentation)ということが重要な要件の一つであることをご説明した通りです。さらに文書体系ということが文書管理の構成要素として必要な要件になりますが、製造所における文書体系の整備ということは、とりもなおさず当該製造所における品質システムの構築と維持のための要件の一つと考えることができます。また近年、品質保証の観点からデータの信頼性(DI、Date Integrity)の重要性が議論されていますが、データとは紙媒体電子媒体を問わず文書であることからこの点からも文書管理を考える必要性があります。 

2.GMP の文書主義

 このように文書管理はGMPの重要な要件の一つですが、その根本をなす考え方はGMPの文書主義ということができます。このGMPの文書主義はSOP(Standard Operating Procedures、作業標準書)と作業記録の2点から考察する必要があります。
まず、SOPの要点は、それが業務を実施する方法を示した文書であり、何か行動を起こす時に従わなければならないステップであること、さらに、企業の製造技術(ノウハウ)を集約した文書である、ということになります。
 一方、記録書の要点は一言で言えば、作業記録のみが正しさを証明できる唯一の方法であるということになります。製造記録や試験記録等の作業記録は当該製品が出荷される際に品質保証部門によって照査され、出荷判定の可否の判断の基準の一つとなります。つまり、正しく製造され試験されたことを確認できる証拠となるわけです。また、逸脱や苦情が発生した場合にその原因究明を実施するための根拠データとなります。さらに、工程改善のタネは製造記録にある、と言われるように、作業記録は逸脱の再発防止など将来的な改善のための資料となります 
 このようなSOPと作業記録の役割をまとめると次のようになります
 まず、実際の作業を行う際に、口頭によるコミュニケーションですとミスが発生しますし、また作業は技術ノウハウの蓄積の上に実施されます。従って、SOPという形で文書が必要になります。このSOPは作業者がいつでも閲覧可能な状態にあり、作業をそれに従って実施します。作業と同時に記録を行いますが記録は実行の証となります。また、記録するという行為により作業の漏れも無くすことができます。さらに、逸脱等の不具合が発生した場合には、SOPと作業記録によって実施した作業を事後に追跡することができます。

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執筆者について

小山 靖人

経歴 小山ファーマコンサルティング代表
NPO-QAセンター顧問
1979年藤沢薬品工業株式会社(現アステラス製薬株式会社)入社、責任者として無菌製剤の製剤化研究、並びにGMP及び治験薬GMP全般に関する品質保証業務に従事。2003年日本イーライリリー株式会社に入社、開発QAマネージャーを担当。2007年塩野義製薬株式会社に入社し、金ケ崎工場の品質部門長を経て、本社部門の品質保証部にてGQPに関する製造所管理業務に従事。2019年、小山ファーマコンサルティングを起業。
この間、厚生労働科学研究「医薬品・医薬部外品製剤GMP指針」を座長として取りまとめ、厚生労働省より発出 (2003~2006年、主任研究官 檜山行雄先生)。厚生労働省の「PIC/Sガイドライン比較分析ワーキングチーム」に参加(2010~2011年)、また厚生労働行政推進調査事業「GDP国際整合化研究班」に参画し(2016年~現在)、GDPガイドライン発出に関与。日本薬剤学会「製剤の達人」受賞(2011年)、薬剤師、日本PDA製薬学会代議員。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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