食品業界のサプライヤーオーデット【第2回】

2020/11/27 食品

坂井 盛

はじめに
 食品業界のサプライヤーオーデットを担う食品安全認証スキームFSSC22000そのものの話に先立ち、前回(第1回)はFSSC22000誕生の背景となる食品の国際貿易から解説を始めた。国連の専門機関である国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同でつくった食品規格を決定する委員会;CODEX委員会が定める食品衛生の一般原則とその附属書であるHACCPガイドラインが、世界貿易機関(WTO)の前身GATTによって採択され、その結果、食品の国際貿易を背景に各国の法令と商取引のための民間認証にHACCPが登場することとなったことを述べた。その後、国際標準化機構(ISO)がCODEXのHACCPガイドラインを含む食品安全マネジメント規格ISO22000を発出したが、衛生管理の要件が具体的に規定されていないことなどを理由に、商取引上の権威ある組織がISO22000を否定したところまでお話しした。
 今回は、ISO22000を認めなかった組織、Global Food Safety Initiative(GFSI)とFSSC22000誕生の背景の話をしたい。

GFSIとは
 Global Food Safety Initiative(GFSI)は、The Consumer Goods Forum(TCGF又はCGF)の分科会的な組織である。従って、GFSIを説明するためにはCGFの話から始めなければならない。CGFは欧米を中心とした世界中の消費財のリテーラー(小売業者)とメーカー、および関連サービスプロバイダのCEOや上級経営層が会員となっている世界的な流通、製造のネットワーキング団体であり、「知識とベストプラクティスの共有」を理念に「環境的・社会的サスナビリティ」、「ヘルス&ウェルネス」、「エンドツーエンドのバリューチェーンにおけるロジスティックスとデータ・フロー」などのリテーラーとメーカー共通の課題、例えば、
 
  -バリューチェーンの効率性を向上し、消費者、労働者および環境を保護する、
   業界にとって重要な業務標準化、
  -企業と業界全体の評判に影響を及ぼす外部ステークホルダー
  (例えば、森林破壊に警鐘を鳴らす環境保護団体)との協働による課題改善

等に取り組んでいる。これら取組みを噛み砕いて言うと次のような説明になる。メーカーとリテーラーは消費者に商品を買ってほしいので、何が消費行動に影響するのかを気にしている。消費者については、例えば、環境への取組みが良くない企業の商品を積極的に購入しない(同程度の価格なら環境に配慮している企業の商品を選ぶ)という調査結果ある。国際的な環境NGOはこの消費者の消費行動を利用し、CGFに対して例えば森林破壊の主原因となっている、大豆、パーム油、牛肉、紙パルプ、木材のサプライチェーンを改善するよう勧告する。勧告を受けたCGFは消費行動に影響するこの問題に取り組まざるを得ず、改善を公式に約束する。強制労働問題についても環境問題同様にCGFの課題となっており、CGF会員の某リテーラーのサプライヤー評価基準には、食品安全についての要求事項の前に、15才未満の労働者を雇用している企業とは取引しない旨が明記されている。このようにCGFは外部ステークホールダーからの意見に耳を傾け、課題解決のために協働している。
 CGF会員の企業の総数は約400社、総売上3.5兆ユーロ、雇用従業員数1千万人を超える規模の団体であり、パリに本部、ワシントンDC、東京、シンガポール、上海などに事務所を置き、リテーラーとメーカー各側から25名、計50名の理事による理事会、1500名の専門家が参画する40以上のプロジェクトとワーキンググループが活動している(因みに、現在日本のリテーラー、メーカーからは、イオン、ローソン、味の素、キリン、花王の社長、CEOが理事に選出されている。)。
CGFは自身の戦略的イニシアチブとして7つのイニシアチブを挙げているが、抜粋して列挙すると、
  -消費者により良いものを提供する業界のコラボレーション
  (バリューチェーンにまたがるデータやプロセス、および能力の管理のための、
   グローバル標準、プロトコルまたは原則を特定し実践する)
  -世界中の消費者をより健康に
  (企業と他のパートナーが協働して、人々がより健康的な生活を送れるよう支援
   し、ビジネスが健康にとって良い力であること実証するための支援を行う)
  -すべての消費者に安全な食品を
  (世界の食品安全マネジメントシステムの継続的な改善を協働で推進するため、
   食品業界の主要関係者を結集する)
  -持続可能なバリューチェーンとビジネスの実践を世界で実現
  (気候変動と廃棄物削減の分野でリードする)
  -ディーセントな労働条件を全ての人々に
  (強制労働の撲滅を世界中のサプライチェーンと、世界中の会員企業の事業内で
   実現する)

などであり、この3番目のイニシアチブがGFSIの活動を指している。

 

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執筆者について

坂井 盛

経歴

アース環境サービス株式会社 
開発本部 能力開発センター
Chartered Quality Institute - The International Register of Certificated Auditors (CQI|IRCA):英国王室公認品質協会/国際審査員登録機構 ; Principal Auditor / IRCA Japan Technical Assessor / Technical Expert。(一財)食品安全マネジメント協会JFS-A/B規格 監査員・判定員。PDA製薬学会会員。関西医薬品協会品質委員。食品・医薬品関連法人向けサービスプロバイダとして、組織・生産施設の品質問題の改善、従事者教育訓練、監査業務に従事。 著書に「非無菌医薬品の製造、品質管理/微生物管理の必要レベルと環境モニタリング測定・基準値設定」(サイエンス&テクノロジー㈱、共著),「2017年医薬品における倉庫および輸送の品質管理の実務~GDPへの対応、必須事項、監査のポイント、GMP体制、教育訓練、運用~」(㈱情報機構、共著)などがある。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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