【医薬品工場建設のノウハウ 番外編】原薬製造設備の基本計画(概念設計)のポイント その3

2020/07/17 施設・設備・エンジニアリング

プロジェクトを成功に導くための手順について、ユーザー(製薬会社)の視点で紹介する。

今回は、原薬製造設備にて多用され、製品品質確保、運転タイムスケジュール維持のキーとなる撹拌槽について機能の観点から要説する。

合成原薬製造における反応槽、晶析槽、抽出槽、バイオ原薬製造における培養槽等の何れも撹拌槽(撹拌機付きの槽)が採用される。これは撹拌槽の取扱いの容易性に起因していると考えられる。この撹拌槽の概要は以下のとおりである(前回の投稿と同様)。
 

撹拌槽は、撹拌翼及び邪魔板によって内槽内の流体を混合し、内槽内の各所での濃度、温度を均一にしようとするものである。
撹拌槽は均一系の液相混合、不均一系の気液混合、気液固混合、液々(二液)混合に広く使用されている。
その操作方法は、バッチ(回分)法、セミバッチ(半回分)法、連続法に大別される。
これらの操作方法の概要及び特徴は以下のとおりである。

バッチ法
バッチ法は、必要な原料の全てを予め撹拌槽に仕込み、所定時間経過した後、撹拌槽内の生成物の全量を排出する方法である。
バッチ法では、撹拌槽内での状態変化は非定常的に進行するので、撹拌時間の調整により任意の状態が得られる。
一方、非定常状態の制御となるため、バッチ間の再現性の確保が困難であるという欠点がある。

セミバッチ法
セミバッチ法は、バッチ及び連続操作の中間的な方法である。
具体的には、必要な原料の一部を予め撹拌槽に仕込み、他の原料を連続的に供給することにより、状態を変化させる方法である。
滴下による酸化、還元反応、貧溶媒による晶析、フェドバッチ培養等がこの操作となる。

連続法
連続法は、必要な原料を連続的に撹拌槽に供給し、撹拌槽から連続的に生成物を排出する方法である。
連続法では、撹拌槽内での状態が定常的に進行するので、制御が容易である。
一方、状態変化の速度が遅い場合は滞留時間確保のため、装置が大型化するという欠点がある。

以上の内、一般的に原薬製造に用いられる操作方法は、バッチ及びセミバッチ操作である。
これは、一般化学製造に比べ、原薬製造は「多品種少量」であることに起因する。また、雑菌、不純物等の交叉汚染防止の観点からも適度な洗浄、滅菌が可能なバッチ及びセミバッチ操作が優位と考えられている。

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執筆者について

河合 正雄

経歴 株式会社シーエムプラス 常務執行役員 技術・設計統括部長
1981年、大手エンジニアリング会社入社。原子力の機械設計、化学のプロセス設計を経験後、1993年からライフサイエンス部門に移動し、数多くのバイオ原薬、合成原薬、無菌製剤のプロセス設計を担当。2014年からは部門マネージメントを歴任。社外では日本PDA、ISPE、HS振興財団、製剤機械技術学会にてWS、開発、委員等を歴任。2017年株式会社シーエムプラスに入社後、無菌製剤、経口剤、外用剤、中分子原薬のエンジニアリングマネージャーを担当。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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