医薬品の原材料管理とサプライヤーオーディット【第6回】

これまでの掲載内容:
前回(2018.9.28)第4回に引続き、今回は原材料(出発物質、中間体、原薬、重要原材料及び資材、添加剤等)のオーディットによる評価法及びリスクに応じたサプライヤー管理について検証する。

はじめに
これまで第1回~4回連載でも述べてきたように、医薬品のグローバル化の中、特にサプライチェーンにおいては、製造委託先/サプライヤー管理(以下、供給者管理と同じ)の対象が、原料調達のための委託先や供給業者のみならず製造機器、製造支援設備、コンピューターなどのハードソフト製造業者、そして製品を流通させる代理店、仲介業者、貿易業、流通業者なども加え、より広範な領域にまで拡大している。それに伴いより適切な製造委託/サプライヤー管理が、原料調達や、医薬品の品質保証且つ製品の恒常的安定供給に欠かせない重要事項として位置付けられる。
従来から原材料業者における「製造及び品質管理等に関わる業務」の確認はGMP管理上の重要な業務であったが、平成25年に発出された一部改正GMP施行通知により、当該原料を用いた原薬や製剤の製造業者にも求められ、令和2年改正が予定されるGMP省令改正案では供給者管理が製造業者のGMP要件に省令化される。正しく原材料業者の委託先や供給者の管理が行われなかった場合、原材料に起因した製品への異物や不純物混入、重大な品質不良或いは逸脱発生、更には様々な事情で原料が供給されなくなった場合、市場へ製品供給不可・製品欠品という深刻な事態を招くことになる。
今回は最終回として、近年特に重要視される原材料(原薬、原材料、添加剤)のオーディットによる評価法及びリスクに応じたサプライヤー管理について、医薬品品質システム(PQS)及び品質リスクマネジメント(QRM)管理の上から解説する。
 ・4.2 原材料製造所のオーディットによる評価法
 ・ 5 リスクに応じたサプライヤー管理(第6回)
 リスクマネジメントの活用によるサプライヤー管理とリスク低減

5 リスクに応じたサプライヤー管理
ICH Q10:医薬品品質システムに関するガイドラインにおける、外部委託作業及び購入原材料の管理(2.7章)図12:
医薬品品質システムは、本章で記述されている経営陣の責任も含め、あらゆる外部委託作業並びに購入原材料の質の監督及びレビューにまで及ぶものである。製薬企業は、外部委託作業及び購入原材料の質の監督を保証するためのプロセスが実施されていることを確実とする最終的に責任を負う。これらのプロセスは品質リスクマネジメントを取り入れ、以下のことを含まなければならない:
(a) 外部委託の運用又は原材料供給者の決定に先立ち、相手方の業務を遂行する適性及び能力又は規定されたサプライチェーンを用いて原材料を供給する適性及び能力に ついても審査すること(例えば、監査、原材料の評価及び適格性確認)
(b) 関与する当事者の品質関連活動に対する責任及び情報伝達プロセスを規定すること。外部委託作業については、このことは委託者と受託者間の契約書に含まれること
(c) 受託者の業務遂行能力又は供給者からの原材料の品質をモニタリングし、及びレビューすること、また、あらゆる必要とされる改善を特定し、及び実施すること
(d) 入荷した成分及び原材料について、それらが合意されたサプライチェーンを用い、承認された供給源からのものであることを確実とするためにモニタリングを実施すること。 
(品質欠陥)
品質欠陥の疑いのあるもの、苦情、傾向、逸脱、原因調査、規格外試験値等から、潜在的に品質に影響を及ぼすと思われる事項を特定、評価、コミュニケーションするための基礎を提供する。
規制当局と共同し、リスクコミュニケーションを推進して重大な製品欠陥問題を解決するための適切な行動を決定する(回収等)。
 
図12: ICH Q10 医薬品品質システム

 

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