医薬品の原材料管理とサプライヤーオーディット【第2回】


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第6期 GMP Auditor育成プログラム
2018年3月7日(水)~9日(金)開催
 
 
これまでの掲載内容
 ■サプライヤーオーディットの要請と選定評価・承認 (第1回)
  1 はじめに
  2 サプライヤーオーディットの必要性と選定評価
  2-1 GMPの適用領域の広がりと供給業者管理
  2-2 サプライヤーの品質リスクマネジメント (第2回)
  2-3 PIC/S・国内GMPに対応したサプライヤーの選定
  2-4 GDPと品質取り決めの要請
 ■サプライヤー管理における受入試験、サンプリング
 ■サプライヤーオーディット
  委託先監査(外部監査)とサプライヤーオーディット(供給者監査)
  委託先、供給者との適正な品質契約システムの構築、オーディットの手順
 ■海外サプライヤーへのオーディット手順と評価法
  □包装容被製造施設、原薬、製剤製造所、原料・中間体、試験施設、委託
   輸送業者等への実施例
 ■リスクに応じたサプライヤー管理
  リスクマネジメントの活用によるサプライヤー管理とリスク低減
 

2 サプライヤーのオーディトの必要性と選定評価・承認
2.2 供給者が製造する製品の品質リスクマネジメント
 PIC/Sを中心としたGMPの世界的な広がりと各国への浸透と共に、製造販売業者は「サプライヤーの供給する製品品質」を維持するため、サプライチェーンの構築、製造所、MF国内管理人、製造販売業者、その他商社等、医薬品の製造~販売に関わる全ての者の連携が求められている。日本のPIC/S加盟の背景には、ヘパリン問題などの品質不良品の多発、偽薬問題、低コスト化に伴う東南アジアや低開発国への生産拠点の移動、国際共同治験の増加傾向などが挙げられる。
 こうしたPIC/S GMP施行による原材料管理の義務化、サプライチェーンの広がりや、業界ニーズの変化に対応し、確認の対象が確実に拡大されている。しかし一方では、従来のGMP管理として原薬の何十倍もある「原材料(添加剤も含む)メーカー」での品質問題、特に異物問題には苦しめられるケースが多いにも拘わらず、少量しか購入せず、しかもnon-GMPの製造所にまでには製造所や製造販売業者も手が回らないのが実情である。
 また特に、以下の問題には手を焼く。
  ■オーディットや取り決めに応じない
   > 運よく訪問できたとしても、肝心の製造現場に立ち入りを拒否される
   > 監査により技術情報が漏えいすることを恐れる
  ■改善要望を受けてもらえない
   (日本のGMPの理解が得られない)
   > 自分の製造所が原因でないと言い張る
    (毛髪や異物混入などでよく発生する)
   > 改善にため投資をするのであれば他で購入して欲しいと言われる
  ■バルク或いは最終製品を製造して輸入する場合、承認書の規格にあった規格・
   試験法で試験を実施してもらうことが困難
   > 日局の試験に理解が得られない
 このような厄介な問題を乗り越えるために、知識と経験のある監査員がサプライヤー監査を行わざるを得ない状況である。しかし、こうした適任者は製薬企業内には有限であるので、原薬、製剤製造所などと同様、同じメーカーの原材料を何社もが共通購入している場合も含め、行政や企業経験豊富な監査員に、第三者監査を行うことも選択肢に加える必要となる。
 製造スケジュールの長い原材料やシングルソースの場合は、代替がすぐに効かないので、供給停止が最大のリスクになる。一つでも必要な原材料が欠品したら、製品の市場出荷が忽ちにストップすることとなる。

 以下に「原薬の供給者管理」の実例を示した。原薬の供給者管理では、製剤開発段階で原薬の選定から原薬を受入れるまでの過程における様々なリスク評価を行うために、原薬GMP ガイドラインの各項目に沿った形で、特性要因図を用いてリスク要因を抽出しリスクアセスメントシートを用いて、品質への影響度やリスク低減策とその評価方法について検討事例を示した(図44)


図4 供給者が製造する製品の品質 <特性要因図とリスクの抽出> 4)
 

 供給者のリスクカテゴリーをハード、ソフト面で分類し、品質影響評価(例えば、重大性、発生頻度、検出性)から、リスク低減策を講じる。
 原薬供給業者の出発原料および製造設備のリスク要因については、供給先の原薬メーカーと適切に取決めが締結されていない場合や、締結されていても実地の監査がされていない場合においてはリスクが高いと評価される。これらの低減策としては、供給業者との取り決めを適切な内容で締結しておくことが挙げられる。そしてその効果は実地監査時に確認をすることで有効性を評価することになる。なおリスク管理には、品質不安の面だけでなく、安定供給面でのリスク評価も当然ながら含まれなければならない(表2)。
 また供給業者の製造方法、品質試験および出荷のリスク要因については、「製造手順に問題があり、一定の品質の製品を製造できない場合」や、「規格ぎりぎりの製品が出荷されるような管理値設定やOOS手順となっている場合」については、高リスクと評価する。この場合のリスク低減策としては、関連する手順書や、規格および工程管理値の見直しが挙げられる。しかしながら、こうしたリスク分析をいくら入念に机上で行ったところで問題解決に至らない場合が多いので、原薬GMPガイドラインの各項目(第1~20章)に沿った形で、実地監査時で地道に確認していくこと以外に真の解決はない。供給業者のリスク低減効果は、最終的に実地監査によって始めて確認することになる。

表2 供給業者が製造する製品品質のリスクアセスメントシート4①、②



「医薬品品質システムにおける品質リスクマネジメントの活用について」
厚生労働省(平成29年7月7日)、一部改編

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