建設におけるCM方式

2015/08/03 施設・設備・エンジニアリング

建設プロジェクト管理の主な要素は,製造業と同じくQ(品質),C(コスト),D(納期)であるが,その多くはコストに帰結される.すなわちプロジェクト成功の可否は,精度の高い予算策定と綿密な予算管理に影響を受ける.本稿では,建設プロジェクトの一般的なフェーズと各フェーズにおける見積りの目的と手法,契約の種類と入札のプロセスについて,ユーザー側の立ち位置から概説した後,プロジェクト遂行におけるCM (Construction Management) サービスへのユーザーの期待とその効果について述べる.さらに,プロジェクトを成功に導くマネジメント手法について,遂行計画の重要性,進捗モニタリングの可視化,リスクのコスト化(リスクマネー)について紹介する.
 
キーワード:EPC(Engineering, Procurement, Construction), ランプサム, 実費償還, 最高限度額保証(GMP), ピュアCM, CM at Risk, EVM法, コンティンジェンシー, アローワンス

1. 建設プロジェクトのフェーズと見積り
建設プロジェクトでは,計画・管理を効率的に実施するため,一般にプロジェクトを,投資調査(FS: Feasibility Study),基本設計(FEED: Front End Engineering Design),詳細設計(E: Engineering),調達(P: Procurement),施工(C: Construction),試運転(C: Commissioning) のフェーズ(段階)に分ける.医薬品,化粧品,再生医療,洗剤などのライフサイエンス関連工場建設を対象としたCM (Construction Management)サービスを提供している弊社の場合,各フェーズの標準的な期間は,図1に示すようになる.
 

図1 ライフサイエンス系建設プロジェクト標準工程
 
以下に,各フェーズの概要を述べる.

1.1 投資調査フェーズ
生産プロセス,年間生産量を基に施設規模,施設の概略レイアウト,必要ユーティリティなどの概念設計を行う.新設または既設改修のケースを加味して複数案の検討を行い,投資額(CAPEX: Capital Expenditure)と運用費(OPEX: Operating Expenditure) を見積り,事業の投資採算性を評価して,プロジェクトの実現可能性可否の判断を行う.
 
1.2 基本設計フェーズ
概念設計に基づき,生産プロセス,必要設備とそのレイアウト計画,建築計画,空調/ユーティリティ計画,電気計画,プロジェクト工程計画などを確定し,プロジェクト要件を定義する.そしてプロジェクト予算を見積り,プロジェクト遂行の最終意思決定を行う.
 
この段階までの成果が,プロジェクト費用の80%程度に影響するといわれているとおり[1],基本設計は,プロジェクト成功を左右する重要なフェーズである.なお,国内のライフサイエンス系プロジェクトにおいては,基本設計図書を引合い図書の一部として,ゼネコン,エンジニアリング会社などのEPC (Engineering, Procurement, Construction) コントラクターに対し,一括請負方式で競争入札を行うケースが多い.
 
1.3 詳細設計フェーズ
基本設計に基づき,調達ならびに施工が可能となる図面,仕様書を作成する.この段階で機器費,工事材料数(BM: Bill of Material),労務工数(BQ: Bill of Quantity) の正確な見積りが可能となる.EPC コントラクターにより工事価格の精算見積が提示され,契約価格を確定するケースもある.なお,海外での工事入札は,BM/BQ が明確となる詳細設計図にて実施するケースが多い.
 
1.4 調達フェーズ
機器調達,工事発注を行う段階である.設計と施工を一貫責任で実施する「設計・施工一括請負(Design-built)」のEPCコントラクターを起用する場合,調達は1.2 および1.3に述べたとおりとなる.一方,工事会社にユーザーが直接発注する場合は,BM/BQ の算出が可能となるレベルの詳細設計図書で引合い図書を構成し,入札をする必要がある.海外プロジェクトでは,このケースが多い.機器については,ユーザーが調達しコントラクターに支給するケース,コントラクターが調達するケース,あらかじめユーザーが調達してコントラクターに発注書を委譲するケースなど,契約によりまちまちである.
 
1.5 施工フェーズ
プロジェクト工程の半分以上の期間を要する段階であり,設計のとおりに工事が進められているかを確認する工事監理,工程・安全・品質・環境を管理する工事管理が実施される.この段階での追加・変更管理の巧拙が,プロジェクトを実行予算内で完成できるかに大きく影響を与える.
 
1.6 試運転フェーズ
施設の検収引渡しに向け,検査立ち上げを行う段階である.ユーザーとコントラクターの所掌区分,検収条件は,あらかじめ契約に規定しておく必要がある.ライフサイエンス系プロジェクトでは,設備の運転時適格性評価(Operational Qualification) までをコントラクター側の所掌とすることが一般的であるが,石油,化学プラント系ではメカコン(Mechanical Completion:静的な機械的完成)とするケースが多い.定義はさまざまであるが,双方の想定外の出費を抑えるべく,スムーズな引渡しを可能とし,瑕疵担保責任などの保証が明確になるよう契約で詳細に取り決めておく.
 

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執筆者について

藤岡 徹夫

経歴 株式会社シーエムプラス 代表取締役会長。技術士(総合技術監理、サービス・マネジメント)、認定コンストラクション・マネージャー。
1980年食品会社に入社。粉粒体ハンドリング機器開発ならびにプラント設計・施工管理に従事。1991年、大手エンジニアリング会社に転じ、18年間にわたり国内ならびにメガファーマを含む海外の大型医薬品工場建設プロジェクトにおいて、エンジニアリング・マネージャー、プロジェクト・マネージャーを歴任した。現場で阪神大震災を被災し、以降4ヶ月間、復旧工事の陣頭指揮を執り、不測の事態を乗り越えプロジェクトを成功に導いた実績を持つ。 2009年に株式会社シーエムプラスに入社、コントラクターのプロジェクト・マネージャーとしての豊富な経験を基に、顧客側に立場で基本計画/設計、見積引合/評価、工事契約、機器調達、詳細設計、施工管理、C&Qの全てのフェーズに亘り、プロジェクト・マネジメントをサポートしている。また、建築設備、生産設備の担当エンジニアとしての実績も多く、守備範囲が広い。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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