【EUとFDAのMRA締結について】ASTROM通信<119号>

株式会社プロス発行のメールマガジン『ASTROM通信』のバックナンバーより記事を抜粋し、一部改編をしたものを掲載いたします。

本稿は【2017.03.31】に発行されたものです。
記事の原著は、こちらでご確認下さい。 ASTROM通信バックナンバー

~安全な医薬品の安定供給をご支援する~

こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

ついに桜の季節がやってきましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

さて、今回は、欧州連合(EU)と米医薬食品局(FDA)で採択した医薬品製造設備の査察の相互承認協定についてみていきたいと思います。
日本-EU間では既に相互承認協定を締結していますが、日本-FDA間ではまだ締結していません。EUとFDAが協定を締結したことにより、今後、日本-FDAの間の協定締結の話が進む可能性があります。
また、EU-FDA間で日本の製造所の査察情報が共有され、日本の製造所が、査察を受ける回数が減る可能性もあれば、逆に、ネガティブな情報がEU-FDA間で共有されてしまう可能性もあるかしれません。
このように、EUとFDAの話題と言いつつ、日本になんらかの影響があるかもしれない内容ですので、是非最後までお付き合いいただければ幸いです。

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EUとFDAの相互承認協定の概要
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欧州委員会(EC)と米医薬食品局(FDA)は、医薬品製造設備の査察の相互承認協定を採択しました。1998年のGMPの協定に関する今回の改訂で、EUとアメリカの規制当局は、ヨーロッパ及びアメリカ市場向けの医薬品及び原薬を製造しているEUまたはアメリカにある設備に関して、お互いの情報を頼ることができるようになります。この協定は、医薬品の承認過程には影響せず、製造所の査察にのみ焦点を絞っています。EUとアメリカの規制当局との連携の強化により、規制当局が、公衆衛生のリスクとなる前に工場の問題を特定し対処する能力を向上させ、医薬品製造業者の管理上の負担やコストが減ることが期待されています。2017年1月19日のワシントンにおけるアメリカの署名、2017年3月1日のブリュッセルにおけるEUの署名により協定は発効し、FDAによる査察の承認自体は今年の11月頃になる予定です。
出典:https://ec.europa.eu/newsroom/sante/item-detail.cfm?item_id=55234


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協定の詳細
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ここから協定の詳細が記載された付属文書について見ていきたいと思います。
1章 定義、目的、適用範囲と製品の対象範囲
1条 定義
※用語集となっています。計14個の用語が解説されてありますが、ここでは、文書の理解に不可欠と思われる用語をピックアップしました。
2~4. “認証された当局”とは、EUにとっては“同等の当局”、アメリカにとっては“能力のある当局”を意味する。能力のある当局とは、FDAが、APPENDIX 4の基準と手順、APPENDIX 1にリストアップされたアメリカの該当する法律、規則、管理規定により、能力があると判断した当局を意味する。同等の当局とは、EUが、APPENDIX 4の基準と手順、APPENDIX 1にリストアップされたEUの該当する法律、規則、管理規定により、明白に同等であると判断した当局を意味する。

10. “公的GMP文書”とは、APPENDIX 2にリストアップされた当局により、製造所査察の後に発行される文書を意味する。公的GMP文書の例として、査察報告、製造所がGMPに適合していることを証明する当局によって発行された証明書、EUのGMP不適合報告、所見の通知、無題の書簡、ウォーニングレター、FDAにより発行されたインポートアラート(輸入禁止措置及び警告書)がある。

2条 目的
この付属文書は、団体(EUまたはFDA)間の公式GMP文書の交換、及びそれらの文書内の事実認定の依存を容易にする。この付録文書は、製造設備の管理を向上し、品質リスクにより一層取り組み、健康への悪影響を防ぐために、査察の重複を避けることを含む各団体の査察資源の活用や再配分を認めることによって、貿易と公衆衛生に役立つことを容易にするよう努める。

3条 適用範囲
1. この付属文書は、製品の販売中(以下、承認後査察)、団体(EUまたはFDA)の領域内で実施される医薬品の製造所査察、製品が販売される前(以下、承認前査察)の11条の範囲、各団体の領域外で実施される製造所査察の8.3条の範囲に適用される。
2. APPENDIX 1は、今回の査察やGMP要件が及ぶ法律、規則、管理規定を挙げている。
3. APPENDIX 2は、この付属文書で対象とする製品の製造設備の管理に責任がある全ての当局をリストアップしている。
4. 協定の6条、7条、8条、9条、10条及び11条はこの付属文書には適用しない。

4条 製品の範囲
1. これらの手順は、販売されているヒト用または動物用の最終の医薬品、中間製品、中間材料、販売されている特定のヒト用生物学的製剤、原薬、APPENDIX 2と20条に書かれた両団体(EUまたはFDA)の規制当局により規制されたものに限り適用される。
2. 血液、血漿、組織、臓器、動物用免疫製剤は、この付属文書の適用範囲から除く。
3. APPENDIX 3に、この付属文書に含まれる製品のリストを含む。

2章 承認の決定
5条 評価
1. 各団体(EUまたはFDA)は、もう一方の団体の要請に従って、APPENDIX 3にリストアップされた製品に関し、この付属文書に準拠して、付属文書発効後に追加された当局も含み、APPENIDX 2に挙げられた当局の評価を出来る限り迅速に実施するものとする
2. 各団体は、この付属文書に準拠して評価を実施するために、APPENDIX 4に記述された評価の基準と手順を使用するものとする。

6条 評価の参加と完成
APPENDIX 2にリストアップされた当局に関し、各団体(EUまたはFDA)は、APPENDIX 4に記載された手順に参加するものとする。各団体は、出来る限り迅速にこの付属文書に準拠して評価を終えるために誠意をもって取り組むものとする。
(a)EUは2017年7月1日までにこの付属文書のもとで、ヒト用医薬品に関するFDAの評価を終えるものとする。
(b)FDAはAPPENDIX 5に設定された通りに、APPENDIX 2にリストアップされた各EU加盟国のヒト用医薬品の当局の評価を終えるものとする。

7条 当局の認証
1. 各団体(EUまたはFDA)は、APPENDIX 4に述べられた基準により、当局を認証するかを決定するものとする。各団体は、当局を認証する決定を速やかに合同部門委員会に通知するものとする。合同部門委員会は認証された当局のリストを保持し、最新化するものする。リストは各団体により公然と入手可能にされるものとする。
2. 評価している団体は、評価の過程で見つかったいかなる不備も、もう一方の団体と関連当局に速やかに通知するものとする。認証拒否の判断の場合、評価団体は、他の団体と関連当局に、拒否の判断の理由と、肯定の判断を得るためにとられるべき是正処置を理解するために十分詳細な情報を提供するものとする。団体は、他の団体に、5条に従って、一度拒否の判断をされ必要な是正処置をとった当局の再評価の実施を依頼することができる。
3. 評価団体は、依頼に基づき合同部門委員会の中で、他の団体と、拒否の判断の理由について速やかに意見をかわすものとする。認証拒否の判断の場合、合同部門委員会により、3ヶ月以内に、適切な期限と当局の再評価のためにとるべき厳格な方策について議論するための取り組みがされるものとする。
 

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