細胞加工施設運営における『経年劣化・老朽化』への対応【第3回】
臨床用にであれ研究用にであれ、ヒト細胞の調製、加工、製造を実際に行うには「細胞加工施設」と呼ばれるハードウエアが必要である。細胞加工施設は一般にCPC(Cell processing center)やCPF(Cell processing Facility)とも呼ばれており、再生医療分野での取り組みを行う上では、必須の施設だ。本稿では以下、CPFの略称を使用する。
昨今、大型建造もあちこちで見られるCPFについて、本稿では長期使用時の経年劣化や老朽化の兆候、それら現象への対応、管理法など実務的な側面を6回に分けて論じていく。
3回目となる今回は、設備交換において、リスクとコストを下げる具体的な方法をひとつ、ご紹介したい。
▽適宜設備交換をしてもトラブルは防げない
まず前回は、CPFが止まってしまうような大掛かりな老朽化ではなく、軽微な異変から話を始めた。些末に思える部分だったかもしれないが、そもそもCPFという高価な施設は、できるだけ長持ちさせることが、多くのユーザーにとって望ましいことのはずだ。こまめなメンテナンスを加えることで長持ちさせられるのであれば、コストパフォーマンスという意味で大変に喜ばしい。なにしろCPFは修繕工事を行うハードル自体が高いから、施設の管理を行う人間にとっては、大きな工事はできるだけ行いたくないのが人情だろう。
が、やはりそう簡単にはいかない。
規模にもよるが、空調関連ではフィルター関連はもちろんのこと、室内外機部品、各種ファン、CAVなども5年を目途に順次交換の検討が始まるだろう。空調関連は一斉交換となると金額も工事規模も大きくなるため、年次バリデーション時に順次行っていくのが一般的だ。こうして年次バリデーション時の点検・交換・メンテナンスを実施しても、10年の間なにごとも起こらなかった、という展開はまずないと思っていい。それでも起こってしまうから、トラブルはトラブルなのだ。
突き詰めれば、施設ハードウェアの問題というのは「施設の稼働が止まるようなトラブルがいつ起きるか」だ。そしてそれを「未然に防ぐのにいくらかけるか」に尽きる。
▽結局、お金の問題
前述の問題に対し、建造・メンテナンス施行側の企業が、当然安全牌を取りたがるのは第一回で記した通り。特に、CPFにおけるトラブルでは、修理が即時実施できるとは限らないことも恐怖を増す理由だ。部品を発注して納品まで1か月、あるいは数か月かかるというケースもあるため、施行側にすれば計画的に交換しないと、いざ不具合が生じたとき、ユーザーに「困る、まだか、どうして壊れた」とせっつかれても困るのだ。
このような背景があるため、ユーザーが定期点検時に業者に対し「少しでもCPF内に不具合があればすべて交換、修繕の対応を取るから報告してくれ」と宣言するのが、「老朽化」によるトラブルに対応する、もっとも簡単な方法だ。彼らはおそらく、あらゆる不具合を報告してくれることだろう。そして言葉通りすべて修繕・交換を行えば、来年の指摘はさらに増えるはずだ(これはけして嫌味ではない。事業者はむしろ依頼者の希望に沿ってそうすべきだ)。
依頼側に知見がなく、いくらかけてもトラブルを防ぐことに重点を置くなら、それでよい。けれどもしもそうでないなら、実は、こう言うことがユーザーにはできる。
「少しでもCPF内に経年劣化が不安な個所があれば、当該部品を発注しておきたいから教えてほしい」
昨今、大型建造もあちこちで見られるCPFについて、本稿では長期使用時の経年劣化や老朽化の兆候、それら現象への対応、管理法など実務的な側面を6回に分けて論じていく。
3回目となる今回は、設備交換において、リスクとコストを下げる具体的な方法をひとつ、ご紹介したい。
▽適宜設備交換をしてもトラブルは防げない
まず前回は、CPFが止まってしまうような大掛かりな老朽化ではなく、軽微な異変から話を始めた。些末に思える部分だったかもしれないが、そもそもCPFという高価な施設は、できるだけ長持ちさせることが、多くのユーザーにとって望ましいことのはずだ。こまめなメンテナンスを加えることで長持ちさせられるのであれば、コストパフォーマンスという意味で大変に喜ばしい。なにしろCPFは修繕工事を行うハードル自体が高いから、施設の管理を行う人間にとっては、大きな工事はできるだけ行いたくないのが人情だろう。
が、やはりそう簡単にはいかない。
規模にもよるが、空調関連ではフィルター関連はもちろんのこと、室内外機部品、各種ファン、CAVなども5年を目途に順次交換の検討が始まるだろう。空調関連は一斉交換となると金額も工事規模も大きくなるため、年次バリデーション時に順次行っていくのが一般的だ。こうして年次バリデーション時の点検・交換・メンテナンスを実施しても、10年の間なにごとも起こらなかった、という展開はまずないと思っていい。それでも起こってしまうから、トラブルはトラブルなのだ。
突き詰めれば、施設ハードウェアの問題というのは「施設の稼働が止まるようなトラブルがいつ起きるか」だ。そしてそれを「未然に防ぐのにいくらかけるか」に尽きる。
▽結局、お金の問題
前述の問題に対し、建造・メンテナンス施行側の企業が、当然安全牌を取りたがるのは第一回で記した通り。特に、CPFにおけるトラブルでは、修理が即時実施できるとは限らないことも恐怖を増す理由だ。部品を発注して納品まで1か月、あるいは数か月かかるというケースもあるため、施行側にすれば計画的に交換しないと、いざ不具合が生じたとき、ユーザーに「困る、まだか、どうして壊れた」とせっつかれても困るのだ。
このような背景があるため、ユーザーが定期点検時に業者に対し「少しでもCPF内に不具合があればすべて交換、修繕の対応を取るから報告してくれ」と宣言するのが、「老朽化」によるトラブルに対応する、もっとも簡単な方法だ。彼らはおそらく、あらゆる不具合を報告してくれることだろう。そして言葉通りすべて修繕・交換を行えば、来年の指摘はさらに増えるはずだ(これはけして嫌味ではない。事業者はむしろ依頼者の希望に沿ってそうすべきだ)。
依頼側に知見がなく、いくらかけてもトラブルを防ぐことに重点を置くなら、それでよい。けれどもしもそうでないなら、実は、こう言うことがユーザーにはできる。
「少しでもCPF内に経年劣化が不安な個所があれば、当該部品を発注しておきたいから教えてほしい」
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