リスクアセスメント&マネジメント(RAMP)【第2回】

2015/03/02 品質システム

"過去の例に学ぶ危機管理とリスクマネジメント
BSEの対応に関するMHLW(厚生労働省)とMAFF(農林水産省)のリスク管理の相違
出典:BSE問題に関する調査検討委員会報告 平成14年4月2日 BSE問題に関する調査検討委員会
 

MAFFのBSEへのリスク管理(対応)
BSEの人への伝達の可能性に関する英国政府諮問機関の発表、EU 委員会の決定及びWHO 専門家会議の勧告を踏まえた対応(1996)における、MHW(当時は厚生省)の関与についての評価。
MHWは1996年4月11日、食品衛生調査会を開催し、WHO専門家会議報告にもとづき、食品衛生上の対策の検討を行った。その際、委員から伝達性海綿状脳症サーベイランスの実施を要請すべきとの発言があった。そこで、翌12日付けで、MHW生活衛生局長からMAFF畜産局長に対し、肉骨粉給与の禁止を含むWHO専門家会議の勧告について、適切な対応がなされるよう要請するとともに、関係資料を提供した。
MAFFはこのWHOの勧告に沿って前述のように一連の措置を取っており、そのうち、肉骨粉に関しては使用中止の行政指導を行った。
BSE問題がヒトの健康問題として浮上してきた以上、BSE拡散防止の観点から、MAFFに対して、より明確に意見を述べるべきであった。縦割り行政で相手に干渉しないという悪い側面が反映したといえる。
WHO専門家委員会には、MAFF関連のFAO、OIEからの参加があったように、BSE問題ではMHW、MAFF両方の協力体制の必要性は国際的にも明らかであった。
 

1996年4月12日の法制化の審議は農業資材審議会飼料部会本部会の議事終了時、流通飼料課長より、肉骨粉の使用禁止について審議を依頼する発言があり、これにもとづいて具体的審議が4月24日に同部会安全性分科会家畜飼料検討委員会で行われた。ここで、2名の委員からは禁止の意見が出されたが、WHO肉骨粉使用禁止勧告は(案)の段階であって詳細が不明であり、今後プレスリリースの内容の変更も予想されるため、勧告内容が決定された時点であらためて再審議することとされた。しかし、5月7日に最終報告書が厚生省から送られた後、何らの対応もとられなかった。当時、米国やオーストラリアが自主的禁止措置をとったことも参考になったらしいが、後述するように両国が法的禁止措置を取った後も、この問題は取り上げられなかった。結局、法的規制について農業資材審議会飼料分科会に諮問されたのは2001年3月(千葉県でのBSE第1号は2001年 9月)になってからであり、これは行政対応上に問題があったと認識せざるを得ない。
EUステータス評価案に対するMAFF回答では、指導は「実質的禁止」と説明されているが、指導措置が徹底していなかったことは、2001年の千葉県でのBSE発生後の調査で明らかになったとおりである。
 

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執筆者について

古澤 久仁彦

経歴 1978年住友化学工業に入社、創薬、安全性等に従事。2004年三井農林(株)に入社APIの製造部門にて、信頼性保証部長を歴任、2010年テバ製薬(旧大洋薬品)に入社、信頼性保証部門、部長としてvendorのGXP全般の監査を担当。2014年退社。
製造所のGM(X)P監査・risk評価並びGMP管理(製造管理、品質保証・管理、文書管理)の実践的対応、risk分析、PMDA/FDA査察の実践的対応を得意とする。
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