医薬品に添加される賦形剤のリスク分析評価

2018/08/17 製造(GMDP)

ICHI Q9, 10, 11に示されたRisk based GMPへの移行が、発表されてすでに久しいが、その間多くのguide lineが、各当局から、特にEMAから発行されている、また3局のハーモナイゼーションも図られてきた。その中で、従来はあまり表立って論議されていなかった賦形剤にも注目が寄せられるようになってきた。2018年2月2日発行のPharmaceutical Technologyに、Mr. Cynthia A. Challenerが、“Managing Risk in a Complex Excipient Supply Chain”を寄稿している。
http://www.pharmtech.com/managing-risk-complex-excipient-supply-chain
3局(USP/FDA, EP/EMA, JP)の各国ののみならず、中国、ブラジル、ロシア、インドのBRICS職においても、賦形剤の規格、規制の見直し、新たなguideが、発出、計画されている。ここでの共通の認識は、賦形剤は医薬品の製造での不活性物質、従属的なその他の物質との認識から、医薬原体と同じように、治療効果に寄与する物質との認識に変化してきている。
これに伴い、賦形剤に関するリスク分析評価が求められるように変化してきている。そのリスクは、製造、流通・供給、賦形剤の品質・安全性の多岐に及ぶ。

1、賦形剤の安全性、構成物といての表示
例えば、EMAは、2017年10月9日に、Better labelling of excipients for safe use of medicinesを発出して、医薬品に含まれる賦形剤の表示を厳格化する方針を出した。この中には、前述した賦形剤がもはや不活性物質ではないことを “賦形剤は、活性物質以外の医薬品のすべてを指す。ほとんどの賦形剤は不活性であると考えられているが、一部の状況では既知の作用または効果を有すると判断される。”と表現して、従来の考えを改めている
www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/news_and_events/news/2017/10/news_detail_002825.jsp&mid=WC0b01ac058004d5c1

その概要は;
医薬品の安全な使用のための賦形剤の表示guide
賦形剤のガイドラインのAppendixに15種類の賦形剤に対する新しい安全性に関するアドバイスが追加されました
欧州医薬品局(European Medicines Agency:EMA)と欧州委員会は、人用の医薬品の表示、添付文書の賦形剤の表示(記述)に関する欧州委員会のガイドラインのAppendixを更新した。
http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Scientific_guideline/2009/09/WC500003412.pdf

この改訂されたガイドラインでは;
賦形剤は、活性物質以外の医薬品のすべてを指す。ほとんどの賦形剤は不活性であると考えられているが、一部の状況では既知の作用または効果を有すると判断される。これらは安全に使用するために医薬品のラベルに記載しなければならない。<この定義が加えられた>

更新されたAppendixには、医薬品の表示、添付文書に合意された安全警告を表示しなければならないすべての賦形剤が含まれている。この改訂の主な目的は、ガイドラインの既存のAppendixに現在記載されていない賦形剤の安全性を評価して、ラベル等に表示することである。それはまた、例えば、子供または妊婦に使用される場合、これらの賦形剤の安全性に特に注意を払う必要があることを警告することを意味する。
更新されたAppendixには、5つの新しい賦形剤および10の既存の賦形剤に対する新しい安全性警告のラベル・添付文書への表示が含まれる。新しく表示に加えられることで、賦形剤の安全性情報が、患者と医療従事者にとっては、服用若しくは、処方する医薬品の選択に意識的な決定を下す際の助けとなるであろうを意図している。

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執筆者について

古澤 久仁彦

経歴 1978年住友化学工業に入社、創薬、安全性等に従事。2004年三井農林(株)に入社APIの製造部門にて、信頼性保証部長を歴任、2010年テバ製薬(旧大洋薬品)に入社、信頼性保証部門、部長としてvendorのGXP全般の監査を担当。2014年退社。
製造所のGM(X)P監査・risk評価並びGMP管理(製造管理、品質保証・管理、文書管理)の実践的対応、risk分析、PMDA/FDA査察の実践的対応を得意とする。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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