ソー責のソー肩にはソー当重い責任がのっている!【第5回】

2014/01/20 製剤


前回は、ペニシリンの30%コストダウンプロジェクトに成功できたことをお話ししたが、そのことでMeiji Excellent Memberに選ばれた。副賞は米国旅行であった。
 足柄工場の主力製品ストレプトマイシン、次に安全性の高い新除草剤ハービエース(ビアラホス)でプロジェクトを進め、全て30%のコストダウンを達成した。この除草剤は、現在の除草剤ザクサにつながっている。ペニシリンプロジェクトと同様に一年、少数精鋭、30%という目標でプロジェクトを進めた。しかし、切り口は異なっていた。成功の要因は、言うまでもなく一体となって進めたプロジェクトメンバーの力である。そういう中で、また新しい取り組みの話が舞い込んできた。
 
1)面白がって取り組む
 明治製菓の新事業開発部から30代の若手社員に事業を考えさせるという企画が提案された。社内の各部署の若手が集められ、ディスカッションをし、考え、多くの提案を出していった。培養に情熱を燃やし、また微生物が好きなことから、明治の強みであるバイオ、発酵の技術を何とか将来のために生かしていきたいと考えていた。
 そして、医薬用でしか使っていなかった酵素について他の分野でも活用する事業を提案することにした。用途は洗剤用、繊維用、飼料用、医薬用の酵素である。また、将来を見越して遺伝子組み換えの技術が活用できる。活用することによって技術も蓄積する。
 そのような時に、鹿児島県工業試験場のM研究員から連絡があった。セルラーゼを大島紬の製造に使いたいという内容であった。大島紬とセルラーゼが一体どう結びつくのかは分からない。伺ってみると、大島紬は、織り上げる前に、絹の糸を奄美大島の泥をつかう泥染めという方法で染める。柄をつけるためには、織る前に、絹糸を木綿糸で縛り、染めない部分を作る。織り上げる前に、その木綿糸を解かなければならないが、きつく縛ってあるので手作業で解くのは大変な仕事とのことであった。大島紬は大変な高級品で、解く際に治具で絹糸を傷めないように慎重に作業しなければならない。その手間を少しでも楽にするためにセルラーゼを使用したいという考えであった。発酵で大量生産ができる、強力なセルラーゼ、メイセラーゼを用いて木綿糸を脆化してみたいとのお話であった。そのことから、共同で鹿児島県の工業試験場との検討を開始した。試験ではうまくいくことが分かった。「木綿弱(もめんじゃっく)」という名前で供給することにした。しかし、このような仕事は初めてであったこと、良い製品であったが販売価格が高かったことや高価な伝統工芸品であるということから、この製品は大きな普及にはつながらなかった。


大島紬 (きもの菱屋のホームページから)

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執筆者について

木下 統晴

経歴 1975年明治製菓(現 Meiji Seikaファルマ)に入社。発酵技術研究、本社薬品生産部生産技術Gで各種プロジェクトを推進後、研究企画管理室長、足柄工場培養室長、岐阜工場品質管理部長、小田原工場長(製剤)、薬事・監査部長等を歴任、2007年執行役員 信頼性保証センター長(総括製造販売責任者)。2012年に役員を退任。この間、神奈川県製薬協会長、日薬連品質委員会常任委員、東薬工品質委員会副委員長等も務める。
※2017年5月現在、一般財団法人化学及血清療法研究所 理事長(代表理事)
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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