最新コスメ科学 解体新書【第8回】
AIとコスメ①
私が担当している「化粧品学」という講義では化粧品メーカーの研究者の方に来ていただいて、講演をしていただいています。忙しいみなさんに山形までお越しいただくのはちょっと気が引けるのですが、直接お会いして終わったあとちょっとお酒を飲みながら食事をしたりするのは、学生たちにとって何よりの機会、ということで続けてきたのでした。
今回お越しいただいたのは、ポーラ化成工業(株)の水越興治氏。ポーラ化成はスキンケアからメイクアップまで幅広い分野であっと驚く新しい概念を提案し続けており、化粧品業界で一目も二目もおかれる名門企業なのですが、水越氏はその中で皮膚科学の研究を続けられ、企業の研究者とは思えないくらい、たくさんの論文や学会発表をされているのでした。
そんなことでわたしとしては皮膚科学の最先端のお話をしてもらおう!なんて思っていたのですが、実際に届いた演題は「化粧品開発と情報科学」。そこには「皆様は化粧品を支える技術・科学といえば何を思い浮かべるでしょうか?化粧水やファンデーションを設計する界面化学、アンチエイジングを達成するための生化学、薬科学でしょうか?いえ、それだけではないのです。化粧品には情報科学も深く関わっているのです。」なんて、ちょっと挑戦的なコメントもついていたのでした。
調べてみたところ、ポーラ化成工業ではかなり昔から情報科学の手法をビジネスに取り入れていることが分かりました。彼らは、顧客の皮膚の最表面の角層にテープを使って摂取するテープストリッピング法を利用して摂取して、皮膚の状態を解析しています。皮膚にセロハンテープを張って引き剥がすとうす~い半透明の膜が取れますが、あのもやもやが角層です。この角層がきちんと整っていると体の内部からの水分の蒸散を防ぐバリア機能が発揮され、潤った皮膚が保たれると言われています。ポーラ化成工業では、テープストリッピングで採取された角層細胞の大きさが同年代の平均値から外れていると敏感肌である可能性が高いことを見つけました [1]。また、代表的な人工知能(AI)技術である深層学習を活用して、テープストリッピングで得られた表皮角層細胞の形態情報から、主観的な疲労の指標や血液・尿から得られた生理的な疲労の指標を推定することにも成功しています [2]。
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