医療機器の生物学的安全性 よもやま話【第54回】

2024/06/28 医療機器

今回は、生体内で分解する有機材料について述べたいと思います。

 

身体の中で分解する有機材料

 

 今回は、生体内で分解する有機材料について述べたいと思います。
 生分解プラスチックと言われて真っ先に思い浮かぶのは何でしょうか。おそらくはポリ乳酸ではないでしょうか。もともと1930年代にデュポンで合成されたようですが、積極的に開発されたのは1990年代の日本と米国の企業で、プラスチックゴミ問題が深刻化したためでした。ポリ乳酸には光学異性体があり、PLLA (poly-L-lactic acid)というL型のもの、PDLAというD型のもの、そして、そのハイブリッドのPDLLA(ステレオコンプレックス型)や、他のモノマーと組み合わせたものなど、様々なポリマーが開発されています。
 

 

 体内でも乳酸は作られます。グルコース代謝において生成され、その場で利用されたり、肝臓でグリコーゲンに再合成されたりして、エネルギー源として用いられています。昔は、筋肉の疲れの原因として乳酸が溜まっているからと言われていましたが、今では必ずしも乳酸が原因ではなく、筋肉のpHが酸性に傾くことが主因とされているようです。
 食品では、ヨーグルトなどの発酵食品として日常的に乳酸を摂取しています。体内では、上記と同様にエネルギー源として利用されます。
 体内ではL型が生成されます。アミノ酸もL型ばかりなので、何か類似点があるのでしょうか。一方、ヨーグルトに含まれる乳酸はD型と言われています。微生物の中には、L型乳酸を生成するものもありますので、微生物発酵は両者があると思っておいた方がよいかもしれません。
 L型ばかりのポリ乳酸は、結晶化しやすく、融点、ガラス転移点も高いため、分解しにくいポリ乳酸と言ってよいかと思います。30年以上前ですが、ウサギの骨内にPLLAのロッドを埋植したことがありました。当時生体吸収性プラスチック材料としてポリ乳酸が医用材料に応用されはじめた頃で、生体吸収性というのだから、どんな風に分解が進むのか見てみたいと思って、職場でこっそり実験していました。最終的には埋植後5年ほど飼育して、ウサギが大きくなりすぎたので、いい加減にしなさいと叱られ、泣く泣く取り出してみました。5年も体内にインプラントしていたのだから、消えているか、何か生体反応が起きているかもと思って見たところ、なんと埋め込んだ直後と何ら変わらず、これで生分解するプラスチックと言えるのかと思ったことを覚えております。このことから、PLLAは、「生分解するプラスチック」ではなく、「生分解する可能性のあるプラスチック」程度に考えないとならないという印象を持ち続けるきっかけとなりました。

 実験動物の寿命はおおよそ下表のとおりです。 

 

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執筆者について

勝田 真一

経歴 一般財団法人日本食品分析センター 理事
1986年財団に入所し、医療機器、医薬品、食品、化粧品及び生活関連物資等の生物学的安全性評価に従事。1997年佐々木研究所研究生として毒性病理学及び発癌病理学研究に携わる。1999年東京農工大学農学部獣医学科産学共同研究員として生殖内分泌学研究。日本毒性病理学会評議員、ISO/TC194国内委員会、ISO/TC194 WG10 Technical ExpertやJIS関連の委員などを歴任。財団では薬事安全性部門を主管し、GMPやGLP対応を主導。情報システム部門担当を歴任。大阪彩都研究所長を経て現在北海道千歳研究所長。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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