医薬品のモノづくりの歩み【第30回】

執筆者関連書籍「医薬品製造におけるモノづくりの原点と工場管理の実践

生産性を評価するための製造原価について(2)

 

 損益計算書に見られる様に、企業が成長していくための利益は売上高から売上原価を引いた利益が源泉になります。

利益 = 売上高 ― 売上原価

従って、利益を上げるためには、売上高を上げること、あるいは売上原価を下げることが求められます。ここで、まず売上高を上げるためには、売上数量を伸ばすか、売上価格を引き上げるかですが、この場合、市場の影響を受けるため、企業の取り組みがそのまま利益にはつながりません。一方、投入資源を節約することで、売上高が変わらなければ、売上原価が下がり利益を上げることができ、企業の努力がそのまま利益につながります。更に、製造業では売上原価のほとんどは製造原価が占めますので、この製造原価を適切に管理することは、企業が利益を上げていくために不可欠なことと言えます。
 そこで、本連載では、製造原価の管理方法について、特にその中で標準原価管理について触れていきたいと思います。
 
 製造原価には、実際に掛かった費用を集計した実際原価と一定の基準に基づいて前もって計算した標準原価があります。では、標準原価とは一体何か?
実際原価と比較して紹介しましょう。表1に示しましたように、標準原価は、原材料や労働時間など原価要素の消費量を科学的且つ統計的調査に基づいてあらかじめ算定した製品1単位の製造に必要な製造原価のことを言います。それに対して、実際原価とは、実際の消費量をもって計算される原価のことで、製造が終了した結果で集計されるため、企業において売上高から製造原価を引いた利益も実績として管理されます。両者で最も大きな違いは、標準原価は、調査に基づいて実現可能な原価として事前に算定されますので、実際に費やされる製造原価の目標となる基準原価になります。また、予算の編成や在庫などの棚卸資産の価格の算定ができるほか、企業が目標とする利益を得るために、許容原価を設定することにも使われます。更に、原価の改善の目標となり、その達成度から業績評価の基準にもなります。
いかがでしょう? 事前に算出される標準原価は原価の基準になり、目標になるもので、いろいろなことに役立ちますね。原価管理面では、実際原価による管理の欠点を補い、会社の目標利益を達成するための許容原価となる標準原価を基準にして、製造で実際にかかった費用と比較することで、製造における様々な問題や課題に対して適切な対策を講じていく有用なツールと言えます。
 では、ここで読者の皆さんへの問題です。次の式の違いを考えてみましょう。

この式に、それぞれ標準原価と実際原価の意味合いの言葉を挿入しますと、左側の式は、

となり、一方、右側の式は次のようになります。

つまり、左側の式では、原価は実際原価であり、利益はその結果として得られる成り行き利益とみることができます。企業としては、年度が終わらないと、どの程度の利益が出たのかわからないため、次の手を打つための戦略も結果が出ないと練れません。それに対して、右側の式では、利益は目標利益を意味し、原価は目標利益を得るための許容原価となり、標準原価として捉えることができます。つまり、目標とする売上と利益を得るために、標準原価を設定して、それを達成するために、事前にどのような対策を講じるか戦略を練ることができます。

 

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