医薬品工場に求められているHSE要件と事例【第50回】

国際化に対応する医薬品会社に必要なHSEとは?
「国内製薬企業の国際化多様化とサステナビリティ 」


1.製薬企業のあるべき姿

製薬企業の国際化が進む中、企業の多様化を配慮した製薬工場の各種取り組みが求められるようになってきました。サステナビリティ経営は新たな価値創造のチャンスで世界共通目標である2030年までのSDGs達成を目指す今、サステナビリティの取り組みは今後ますます必要とされます。企業においても、環境・社会・経済の持続可能性に配慮したサステナビリティ経営の重要性が高まるでしょう。自社の事業や課題および社会全体に求められることなどを考慮し、自社にサステナビリティを取り入れ実践して行くことが国際化多様化の最初のステップかもしれません。サステナビリティ経営の実践には、事業活動や体制の変革が必要となることもありますが、大きな変化が伴う一方、新たな価値を創出するチャンスでもあるのです。新たな価値を創造するためには、自社のみならず他社との協働で新たな商品・サービスなどを作り出す「共創」も検討するとよいでしょう。共創することで、自社だけでは得られなかった視点や技術が獲得でき、これからの社会に必要とされる新たな価値の創造につながる可能性が広がります。

<サステナビリティに取り組むメリット>

サステナビリティに取り組む主なメリットは、次の点が挙げられます。

①企業価値の向上につながる

サステナビリティへの取り組みは、企業イメージや企業ブランドの向上につながります。昨今、投資家や消費者においてもサステナビリティへの関心は高まっており、環境問題や社会問題に取り組む企業を重要視するようになりました。したがって、サステナビリティ経営を行う企業は、企業イメージを向上させやすくなるのです。顧客や取引先、消費者などのステークホルダーから信頼を得られれば、企業価値も高まるでしょう。

②事業拡大の可能性が広がる

サステナビリティの取り組みは、新たな市場開拓や事業創出につながる可能性も秘めています。2017年に「ビジネスと持続可能な開発委員会(Business and Sustainable Development Commission)」が発表した報告書では、「グローバル目標を達成することで12兆ドルの機会創出になる」と予測されており、サステナビリティ関連の事業拡大が期待されています。環境関連の製品やサービスに対するさらなる需要の高まりや、サステナビリティに取り組む企業同士の連携による新規事業開拓のチャンスも広がっていくでしょう。

③従業員エンゲージメントが高まる

サステナビリティに取り組む企業は、ステークホルダーをはじめ社会全体から高い評価を受ける傾向があります。社会から評価され、職場環境などにも配慮した企業で働く従業員は、自社へのエンゲージメントが高まるでしょう。エンゲージメントが向上することで、従業員のパフォーマンス向上や離職率の低下が期待できます。また、採用面でも優秀な人材を獲得できる可能性が高まります。

④資金調達の面で有利になる

先述したようにESG投資が世界のトレンドとなっており、最近では投資の基準としてESGが重視されています。したがって、環境や社会の課題に配慮し、サステナビリティに力を入れている企業は資金を集める際にも有利であると言えます。

少なくとも法律で求められているような情報は世界中のすべての人々に知ってもらうよう図る事が各国の政府や企業の重要な使命だと筆者は考えています。医薬品製造を大なり小なり行う会社にとっての社会的責任・使命は医薬品の安定供給と製品の品質確保ですが、そのための原薬や試薬のオペレーションを行うメーカー従業員の健康安全環境が守られていて、更にサステナビリティで必要な情報を世界中に開示して、初めて社会的責任や会社の使命が達成できるのです。


2.国内製薬企業の現状

しかし、日本の製薬企業におけるサステナビリティは一部の企業で取り込まれているものの国際化多様化に充分対応出来ているかという判断基準であるサステナビリティのガイドライン、指標課題をまだまだ検討し取り込んでいる企業は少なく頭を抱えているようです。

企業がサステナビリティに取り組みメリットを享受するには、適切な情報開示を行い、社会的に評価される必要があります。適切な情報開示のために、国際基準のガイドラインや投資家向けのESG観点の指標を受け入れることが出来ていない。

Reporting | UN Global Compact   参考:(国連)Global Compact 

国際的な情報開示ガイドライン「GRIスタンダード」への取り組みはまだまだ席に話しとなっている。

国際基準のガイドラインの1つである「GRIスタンダード」は、世界中の数多くの企業がサステナビリティ報告書を作成する際に活用しています。企業における説明責任の基準策定を目的とした、国際的な非営利団体GRI(Global Reporting Initiative)により作成されたフレームワークです。GRIスタンダードは、すべての企業に共通する「GRIスタンダード」、項目別の「GRI項目別スタンダード」、個別に適用される「GRIセクター別スタンダード」から構成されています。「GRI項目別スタンダード」では、自社に合致する項目を選択して報告します。これにより必要で適切な内容の世界的開示を行い続けることが社会的責任やESGのガバナンスに適合する早道となり、企業の投資に有利なビジネスが展開してゆけるというプロセスを理解出来ていない企業がまだ少なからず存在しているようです。

 

 

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