ゼロベースからの化粧品の品質管理【第39回】

 

―『微生物汚染トラブル防止』について ―


 化粧品GMPに関して、監査における要求事項の確認から一歩進んで、実際の運用面の視点で品質保証の強化についてお話させて頂いています。今回は、前回の『表示ミス』に続き、『微生物汚染』に関するトラブル対策に焦点を当ててお話しいたします。
 化粧品GMPにおける微生物汚染対策は、原料の管理や、作業員・環境・設備に関するクロスコンタミ対策が主要なポイントとなります。しかし、化粧品を安全かつ安心してご使用いただくためには、処方面やお客様が使用する状況を考慮した容器設計など、総合的な微生物対策が不可欠です。一方で、微生物対策については防腐剤や殺菌剤の種類や配合量の議論が頻繁に行われますが、防腐剤による殺菌効果は「濃度×時間×温度」の関数であることや、「溶液のpH」にも留意する必要があります。
 製品の保証に関しては、未開封で常温保存において3年間以上の品質保証が求められるため、防腐力が3年以上確保されていることが不可欠です。また、化粧品の品質保証においては、「安全・安心」な製品の提供が求められます。そこで、今回は消費者の立場に立ち、製品としての微生物汚染に関する保証の考え方について説明させていただきます。

1.防腐剤・殺菌剤の要求事項
  化粧品において防腐剤・殺菌剤を選択する際には、以下のポイントに留意する必要があります。
  ① 多くの微生物に対して効果を発揮しているか(対象が広いかどうか)。
  ② 有効な量はどれくらいか。実用濃度を超えていないか。
  ③ 処方系で安定しているか。製品のpHにより効果が大きく変わらないか。
  ④ 生態に無毒で、刺激や感作を引き起こさないか。光毒性、光感作、変異原性がなく、
    高い安全性が確保されているか。

 以前、海外の有名メーカーのマスカラ製品で、法的に許可された最大配合量のパラベン類が、様々な処方に対して一定の比率で混合されているのを見かけましたが、安全性の面で不足を感じました。一方で、パラベンフリーを謳うシャンプー製品では、安息香酸Naのみが配合されているものもあり、その経時的な効果に疑問を抱きました。注意が必要です。
 最近では、防腐剤・殺菌剤の配合には消費者の関心が高まっており、ナーバスな事項も存在します。そのため、慎重に検討し、適切に配合することが必要です。一方で、防腐剤フリーを謳う製品も多く市場に提供されています。これらの製品は一次および二次汚染に対する対策がより強く求められます。特に、消費者が使用する環境での汚染リスクと、それに対するグリコール・アルコール類の濃度および容器の設計について検討が必要です。この点に関して、後程それぞれ説明します。
<国内で使用することが出来る防腐剤とその量:化粧品基準の中で別表3>
 1)すべての化粧品に配合の制限がある成分
 2)化粧品の種類により配合の制限がある成分
(平13厚労告158・平16厚労告393・平17厚労告465・平18厚労告371・平21厚労告219・一部改正)


2.一次汚染の発生要因と防止対策 
 食品で見られる腐敗は、特定の微生物の増殖が原因です。同様に、化粧品でも乳化の破壊や変質が起こることがあり、これは微生物の増殖が引き起こすもので、増殖のためには適切な栄養素、適正な温度、適量の水が必要です。したがって、水分を一定限度以下に保つと、微生物の増殖は完全に阻止されます。微生物が利用できるのは、「自由水」と呼ばれる「分子が自由に動き回ることのできる水分」です。この自由水の制御が非常に重要です。
 

【水分活性】 AW=P(該当製品中の水蒸気圧)/P0(純水の水蒸気圧)  


【製品中における防腐剤の水相/油相と水分活性】

 

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