ゼロベースからの化粧品の品質管理【第36回】

―『外部委託先の監査の進め方』について―

 化粧品GMPに関して、規格要求事項の中で運用面からお話させて頂いています。その中で、外部委託先の管理について質問を受けるケースが多いように感じていますので、今回は『外部委託先の監査の進め方』について、私が重要と考える事項についてお話させて頂きます。
 一般的なGMPの適合監査では、アクセスポイントの状況やその事業所の取り巻く環境からリスクを想定し、入出者の管理状況や入出制限の状況から一連のGMP要求事項に対して管理状況をチェックすることになります。今回はGMPの適合性審査ではありませんので、半年に1回や1年に1回の査察において、品質リスク面からどのように監査を進めるかという視点で話をさせて頂きます。
 GMPの適合監査では、各要求事項に対してチェックリストを作り、文書、実運用について確認を行います。しかしながら、取引関係がある会社の第二者監査では、自社の商品の品質保証の確保に絞って具体的な運用体制の監査が中心になります。従って、単に仕組みが出来ているかどうかの視点ではなく、自社の求める保証水準や保証体系に沿って、レベル感を含めて適合しているかの視点での監査が必要になります。その一方で、監査を受ける企業にとって自社の位置付けや売上に占める自社の割合、稼働率の割合等を把握した上で話をしないと一方的な主張になってしまいますので、どこまで要求するのかの判断が必要になります。私も化粧品で無菌性の保証まで要求される企業の方がおられましたが、化粧品は無菌性の要求まではされていないことと、年に数回の最小ロットでの取引だったため、コスト面の覚悟が出来ているのかも含めて疑問に感じました。特に、監査ではハード面を中心に行いがちですが、投資や費用が発生する事項になりがちで、実効性面で時間が掛かりますので、先ずはソフト面から監査、アドバイスをする姿勢が重要と考えます。(本来の監査はアドバイス的な発言は禁じられています。)

1.品質保証体制の確認を主とする監査の流れ
 ISO22716の適合性を主とする監査では、監査先のGMP組織および職制組織の確認から始まり、一連の要求事項について事前のチェックリストに基づき要求事項に対して、手順およびその記録類を確認します。その後に、その手順に従って実際に運用されているのか、現場の確認とサンプリングによるインタビューで実運用の状況について確認します。手順等の確認においては、監査に先立ち当日、監査を行う企業にとって重要と考える製品や直近に生産された製品とそのロットを指定して原料・材料の受入れから製品の製造所までの出荷までの監査を行います。
 しかしながら、OEM先の監査を行う場合には他社向けの製品に関するものがある場合には確認できる事項が制限されることがあっこと、一般論で話をすると他社からは問題視されていないと逆に指摘を受けてしまうこともあり匙加減は難しく、そもそも時間が制限され短時間の対応が求められていますので、効果的でかつお互いがWin―Winの関係で前向きな方向に進むような形で監査をしないと、以降のビジネス関係が悪化して取引面で上手くいかなくなる可能性があります。特に、海外メーカーとのやり取りに関しては、フェアーな要求やロジカルな説明が求められますので要注意です。従って、基本的なスタンスは自社の商品に限定して品質リスク面からのアプローチを行い、逸脱品や顧客クレーム品からサンプリングしてトレースバック(出荷からプロセスを遡る)の方法で監査を行います。監査の際には、問題を起こした直接的なプロセスの確認に止まらずに、その製品がプロセスにおいて確認や検査からの漏れが発生した原因についても確認することが重要です。

*)生産は上記フローになりますが、トレースバック方式は出荷判定書から原材料の受け入れまで遡ることになります。

 
 監査の全体的なフローは以下の手順で行います。但し、細かな監査に先立ち監査先の玄関から入った雰囲気や従業員の挨拶や行動の状況や掲示物の状況等、第六感で感じる事項が重要であると考えます。

<監査の流れ>
① トップインタビュー:本来は外部環境と内部環境の変化状況とそれに伴う課題対応状況、品質保証の最近の取り組み等、会社の全体状況を聞きたいものの、的を絞り端的に業界の動きとその対応状況、課題事項、監査先企業にとって監査者企業の位置付けがどのようになっているのか(売上の割合、稼働率等)を聞くことになります。その際には、取引先にとって自社がどのように扱われているのか、トップがどのような位置付けで考えているのかを把握することが重要で、どこまで踏み込んで議論ができるのかをここで判断します。監査では。客観的な事実に戻基づき行えば良いという方もおれらますが、所詮はビジネスでの関係性なので注意が必要であると考えます。
② 品質部門に対する品質管理体制の課題と対応状況の確認
品質部門では、品質保証におけるリスクの認識が中心になります。機器の校正管理や試薬の管理、試験機器の管理状況に目が行きがちですが、本来は逸脱発生事項やお客様クレームの対応とその結果に基づく保証体制の確認が重要で、品質管理に関する事項はサンプリングに基づき該当製品での運用の確認で十分であると考えています。

 

 

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