ファーマデジタル化の問題点 -第1回:導入と紙からの移行
ファーマデジタル化の問題点 -第1回:導入と紙からの移行
医薬品製造業におけるデジタル化(DX)とPharma 4.0の進展はあまりにも遅い。電子システムは効率と品質を劇的に改善できるが、その導入を妨げているのは何か。そしてどのようなアプローチと技術が、真の変化を可能にするのか:
David Margetts, Factorytalk; 2023年5月
当記事は、筆者の経験に基づく意見です。
本記事は、製薬会社のデジタル化に関する記事シリーズの第一弾です。データ記録を、紙から最新のITシステムに移行するための現状と課題、及び利点を紹介します。
はじめに:
デジタル化とは、工場や企業における包括プロセスを改善するため、収集したデータをより高度に活用することです。この記事では、Pharma 4.0に移行するために必要な、現状、前進するための機会、主要な寄与技術についてまとめています。
私は高校時代、ヨーロッパ最大級の生産拠点にある微生物学研究室で初めて実習をして以来、製薬業界で働いています。その研究室は、複数の無菌注射剤製造工場にサービスを提供しており、それぞれの工場で50人以上のクリーンルームオペレーターが、24時間体制で作業を行っていました。すべての製造バッチは、適正業務基準(GxP)と厳格な規格への準拠を保証するため、膨大な量の品質管理(QC)テストを行っていました。最初に私が抱いた印象は、倉庫管理、物流、エンジニアリングなどといったサポート機能や工場内にある大量の図面や文書への驚きでした。ロボット分析器が処理するメディアプレートが、無限に積み重っていくのを手伝いながら、プレフィルドシリンジを組み立てるラボ、そして製造現場の自動化が驚くほど洗練されている一方、データ収集やオペレーション制御の主な媒体が、紙であることが不思議に思えました。
それから25年、私は数え切れないほどのITプロジェクトに携わりましたが、製造業におけるデータや手順の管理に関する状況は、大きく変わっていないように映ります。確かに、大手工場や有力なモデル工場では、実験室情報管理システム(LIMS)や製造実行システム(MES)といった基幹システムの導入に成功し、最終的には統合資源計画(ERP)から工程管理までISA95レベル [1] で統合することに成功しました。しかし、これを実現するための高いコスト、リソース、スケジュールの関係で、広く展開もできず、十分な勢いもないことが証明されました。
2023年の今日、医薬品製造工場の大部分は、重要なデータ管理の電子的ソリューションを使用していないか、せいぜい部分的か断片的な採用にとどまります。Industry4.0やPharma4.0が騒がれる中、なぜ我々の工場が、インターネットが普及した現代で経験するような素晴らしい恩恵を享受するのにこれほど時間がかかるのかと、人々は疑問に思い始めています。
なぜ、紙から移行しなければならないのか?
私の信条は、「紙に書いてあれば、それはデータではない」というものです。この記事では、手作業によるデータ記録に関連する課題を簡単に説明しますが、網羅的にではなくデジタル化の機会について説明します。
GxP製造環境における紙の使用は、大きなコスト、人的負担、非効率を生み出します。年間数十万ページの印刷、配布、アーカイブにかかるハードコストはもちろんのこと、紙のフォームに記入することは、重要なGxPの証拠や情報において、人的エラーの負担とリスクを直接的に増加させます。重要なデータであろうと、貴重なデータであろうと、サポート・データであろうと、すべてチェックする必要があり、文書化されたものが正確であることを確認するために、複数レベルの人の目によるレビューが必要です。
工場で働く人々は、管理者や監督者のオフィスに定期的に出向き、必要文書の管理コピーを要求したり、記入漏れや署名を確認したり、記入漏れのある書類をどうするか話し合ったりすることに慣れています。しかし、完璧な文書化は製品の品質には関係なく、多くの場合、主な目的は監査における防御的対応であり、有用な情報を照合することは二の次です。データは入力後、工場内を物理的に移動した後に見直されるため、発見されたエラーは修正されるまでに時間がかかることがあります。重要なデータに誤りがある場合、バッチに影響を与え、スクラップ、再加工、最終製品の出荷遅延につながる可能性があります。また、クリーンルームでは、バッチごとに出し入れする書類やペンを滅菌するだけでも、紙に関連する問題が発生します。
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