偽薬事件から、APIの品質保証を考える(3)

2013/07/19 原薬

 今回は、ジエチレングリコール(以下DEGと略号で示します)の中毒事件を紹介いたします。
 
 DEGは、エチレングリコール、プロピレングリコールと共に、冷却ブライン、自動車の不凍液として使用されています。比重は1.118で甘みのある粘性のある液体です。DEGは、体内に入るとヒドロキシエチルオキシ酢酸に代謝され、この代謝物が血液中でアシドーシスを誘発して、腎毒性を示します。(文献1)

 
 DEGの成人に対する致死量は70gほどと言われています。ラットに対する経口 LD50 は12g/kgという報告があります。(文献2)。食塩のラット経口 LD50は3g/kgと言われていますので、(文献3)食塩よりも弱い毒性ということになります。ただ、食塩は塩辛すぎて大量に摂取することはまずありませんが、DEGは、甘みがあり、苦み等の不快な味がないので、大量に摂取出来てしまいます。
 
 一方、同じような構造をしている、グリセリンは、脂肪の構成要素であり、毒性がほとんどなく、浣腸剤、調剤用薬として日本薬局法に収載されています。シロップ製剤の基材としてよく使用されています。ところがグリセリンは、DEGよりも価格が高いのです。そのため、グリセリンと同じような性質を持つグリセリンの変わりにDEGを使ってやろうという悪い輩が出てきて、DEGの中毒事件が起きることが多いというわけです。今までにDEGの中毒事件は世界のいろいろなところで、度々起きているのですが、中でも特にセンセーションを巻き起こし、食品や医薬品の品質管理ついて考え直すきっかけとなった事件を、3つ、時間の経過とともに紹介したいと思います。

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執筆者について

森川 安理

経歴 アンリ・コンサルティング 代表。
大学修士課程で有機化学を専攻後、1977年旭化成工業(株)入社。スクリーニング化合物の合成、プロセス化学研究に一貫して従事。この間薬学博士号取得。その後、医薬原薬の工場長を10年経験。工場長として、米国、イタリア、豪州、韓国の当局の査察および、制癌剤を中心にする治験薬の受託生産を経験。旭化成ファインケム(株)を2013年2月末退職。2013年3月より現職。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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