医薬原薬の製造【第26回】

2017/05/17 原薬

反応モニタリング
筆者は学生時代新しい有機合成反応を探索する研究室に在籍していました。反応が進行しているのか?終点はどこかを決定する分析手段は、TLCでした。反応液をキャピラリーでサンプリングして、TLC板にスポットし、そのまま、展開します。TLCの特徴はとにかく分析が速いことです。展開の時間が律速で、5cmTLC板ですと、数分で結果がでます。遅い反応ですと反応の進行をモニタリングすることができました。ただし、定量はできません。現在では、TLC上の物質のUV吸収をモニタリングする装置がありますので、精度は悪いですが、定量もできてしまいます。

筆者の学生時代(1970年代)、ガスクロマトグラフィーによる反応解析もTLCと共によく行われていました。TLCに比べて定量性に優れていましたので、重宝いたしました。しかしながら、GCで分析できるのは気化できる分子のみで、気化しない分子に適応することはできません。極性基をシリル化して気化しやすくする方法もありますが、この手法も適応できないことが多いです。当時HPLC(高速液体クロマトグラフィー)はまだ一般的ではなく、資金の豊富な研究室だけが持っているという状態でした。1977年に社会人になり、スクリーニング化合物の合成の仕事をした1980年代以降は、HPLCの価格も下がり、HPLCが反応解析の主流になっておりました。HPLCは定量性がいいので出発物質、不純物、生成物の定量を一度に行うことができました。TLCでもこれは可能なのですが、HPLCでは定量の精度が桁外れに上がりました。これだけでもずいぶん便利になったものだと思っておりました。

最近in situ スペクトルというものが普及してきています。IR, NIR, Ramanなどの赤外線吸収プローブを反応系に差し込むだけで、赤外線等の吸収率の測定により反応モニタリングをすることができるようになったのです。私の学生時代のIRスペクトルは、液体サンプルであれば、KBr板に挟んで直接測定するか、結晶であれば、粉末KBrと混ぜて圧縮成形した薄板で測定するのが一般的でした。また溶媒に溶解してKBr溶液セルで測定する方法もありました。いずれも、サンプルの前処理が必要でした。それが最近前処理することなく、直接反応系にプローブを入れてスペクトルの測定ができるようになってきたのです。また反応混合物のスペクトルを継時的に測定し、原料、生成物をそれぞれ別々に定量することができるようになったのです。

反応混合物のIn situ スペクトル測定が可能になったのは、ATR (Attenuated Total Reflection )という技術が開発されてことによります。ATRでは赤外線をプリズムに全反射する角度で当てます。光は全反射するのですが、反射光はプリズムに接触している物質のIR吸収を受けるという原理です。従来のIR、ラマンスペクトルは、吸収スペクトルですが、ATRは反射スペクトルとも言えます。プローブ中のプリズムが液体に接触している場合、接触面付近の液体の吸収が観測できますので、プローブを反応系に入れるだけでスペクトルが得られるのです。ただし、直接透過するわけではないので、感度は悪くなります。固体に直接接触させて測定する場合は問題ないのですが、溶液や懸濁液の場合は、数十秒のスキャンを繰り返して感度を稼ぐ必要があります。従って数秒で反応が完結してしまう速い反応の解析に適用するのは難しそうですが、通常の反応であれば問題なく反応追跡を行うことができます。(以下の島津製作所社HP参照) http://www.an.shimadzu.co.jp/ftir/support/lib/ftirtalk/talk/05.htm

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執筆者について

森川 安理

経歴 アンリ・コンサルティング 代表。
大学修士課程で有機化学を専攻後、1977年旭化成工業(株)入社。スクリーニング化合物の合成、プロセス化学研究に一貫して従事。この間薬学博士号取得。その後、医薬原薬の工場長を10年経験。工場長として、米国、イタリア、豪州、韓国の当局の査察および、制癌剤を中心にする治験薬の受託生産を経験。旭化成ファインケム(株)を2013年2月末退職。2013年3月より現職。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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