医薬品の技術移転のポイント【第22回】

10.技術移転時注意点

1)試験法の技術移転時における具体的な手順、規格設定、バリデーションなど
(1)新規試験法の場合
 試験方法を見て実施できる場合は、試験を行い同じ結果が得られるかどうかを確認します。試験方法を見るだけでは出来ない場合は、試験方法の技術移管を受け、同じ結果を得られるか確認します。移管を受ける側が移管元の試験室に行って研修を受けるなどを行う場合もあります。

  • 研究部門⇒生産部門
  • 製造所A⇒製造所B
  • 外部試験機関に試験委託 などがある。

 この場合、受ける側は委託元から試験法のバリデーション報告書をもらうことです。

(2)公定書記載試験方法の場合
 公定書はバリデーション済との解釈です。すでにその製品が公定書で行われており、問題ないことが検証されていれば公定書に従って試験を行い、製造所間のデータを比較して問題がないか確認します。公定書をその製品に適応するのが初めてであれば、公定書をその製品に適用して試験結果に妨害がないことを確認します。

  • 真値の確認など
  • 微生物試験で発育阻止がないか
  • 添加剤に妨害がないか

 新規日局収載時、日局案は先発メーカーが試験方法を作成しているので、ジェネリックメーカーは自社品がその試験で問題ないかを確認します。

(3)試験方法の移管(公定書、新規試験など)
 試験結果が同じかどうかは、試験方法のサイトバリデーションを行い確認します。サイトバリデーションのバリデーション計画書(判定値含む)を作成するが、以下の点に注意が必要になります。

  • 統計処理で有意差有無を判定基準にしている場合があるが、この場合二つの視点からの注意すべきことがあります。αとβの誤りです。
    (αの誤り)

 GMPではデータ数が3と、バラツキを得るのに最小で試験を行う場合がよくあります。そうするとたまたまデータのバラツキが小さくなり、意味のない差を”有意差有り”と判定してしまいます。実際にコンサルを受けていて、旧分析装置Aと新分析装置Bのt検定を行い、n=3のデータのバラツキが少なかったために0.3~0.5%の差を”有意差有り”と判定してしまっていました。その差は意味のない差ですが、試験バラツキが小さくなると”有意差有り”になります。この場合は、最初に規格幅にもよるが、0.3~0.5%の差以内であれば新旧の分析装置に差はないとすると判定値に明記しておくことです。
(βの誤り)
 試験のバラツキ大きいと、問題になる差があっても検出できません。t検定で”有意差があるとはいえない”と判断し同じだとして認めても後日、差があることで問題になる場合があります。

 通常統計処理を行う前に、その分析方法のバラツキがいくらあるかを確認し、そして何%を検出する必要があるかを定め、そのための試験バラツキを一定にするために試験のn数を事前に決める必要があるが、GMPではこの前段階が飛ばされている場合が多いです。このことを知った上で統計処理を判定に使うのは良いが、知らずに判定に”有意差があるとはいえない”などとすると後日問題になる場合も出て来ます。
 

 

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