知的財産の基本から知財ミックスまで【第2回】

2022/07/08 その他

今回は、特許の対象となる「発明」とは何かということに焦点を当てながら解説をする。

<はじめに>
 はじめまして、ブランシェ国際知的財産事務所の共同代表弁理士の高松孝行です。今後、共同代表弁理士の鈴木徳子と交代で記事を執筆していきますので、どうぞよろしくお願いします。

 今回は、特許の対象となる「発明」とは何かということに焦点を当てながら解説したいと思います。

<発明とは>
 特許法上、「発明」とは「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」
 (特許法2条1項)と規定されています。特許は、この「発明」を保護するものです。

 下図をご参照いただきたいのですが、「発明」の要件(条件)は、「自然法則を利用していること」、「技術的思想であること」、「創作であること」および「高度なものであること」となります。


 したがって、この図に記載されているように、ゲームのルールなどの人為的な取決めは「自然法則を利用」していないので発明に該当しません。また、自然現象の単なる発見は、「創作」ではないため発明に該当しません。

 では、プロレス技はどうでしょうか?
 実際、過去に「逆さヒザ落とし」という発明が特許出願されています(出願番号:特願昭56-032730)。この特許出願書類に添付された図面は次のようなものです。

引用:特願昭56-032730 

 
この図を見れば分かると思いますが、出願人は、実際のプロレス技について特許取得を考えたようです。
 ところが、この特許出願は、特許庁に実体審査を依頼する出願審査請求が申請されなかったため、実態審査をされることなく最終的に出願が却下となりました。

 しかし、出願審査請求を申請して実体審査を受けたとしても、特許にはならなかったでしょう。
 プロレス技は「技能」であり、「技術的思想」ではないからです。技術的思想と言えるためには、第三者に伝達できる客観性が必要とされますが、「技能」は、個人の熟練により到達し得るものであり、他人に伝達できる客観性はありません。

 特許法上の「発明」に該当するかどうかは、特許法第29条第1項柱書の規定により判断されることになっています。この規定には、特許要件の一つとして、「産業上の利用性を有する発明」であることが定められており、前述のプロレス技が実体審査された場合には、この規定に違反するとして拒絶されることになったと思われます。

 

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執筆者について

高松 孝行

経歴

ブランシェ国際知的財産事務 共同代表弁理士。
茨城県出身。東京工業大学大学院にて原子核工学を専攻。大学院での研究経験を生かして、弁理士となる。特許事務所勤務を経て、独立行政法人産業技術総合研究所(現国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研))にて、医薬・医療機器関係の技術を含む技術移転業務に従事。数百社との技術移転交渉、1,000通を超える契約書作成を経験。産総研退職後、2015年3月事務所開設。現在、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業カタライザーおよび独立行政法人中小企業基盤整備機構の中小企業アドバイザー等の公的機関の専門家として、医学部の教授、医師、医療機器メーカー、医療ベンチャー企業等の支援を行う。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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