再生医療等製品の品質保証についての雑感【第38回】

今回も、前回に引き続き、筆者らの細胞加工製品の製造コストに関する論文について解説する。
細胞製造の運用設計 (2) ~ 自動化(機械操作)導入の費用対効果 その2
はじめに
今回も、前回に引き続き、筆者らの細胞加工製品の製造コストに関する論文について解説し、細胞加工製品の製品単価(CoG: Cost of Goods)削減の考え方について、雑感を述べさせていただきます。前回、本報における手操作と機械操作が予め示された工程の前提(① 入室、② 導入、③ 加工作業、④ 清浄化、⑤ 退出の作業によるサイクル)において、算出された製品当たりの要求コストが、両者においてほとんど差異が認められないことを示しました。では、前提が異なればどうなるのでしょうか。
● 算出された手操作と機械操作の要求コストの内訳
前回の論文解説では、コスト試算において、機械操作(自動化)は手操作とそれほど差異が無いとお話ししました。ただ、これはあくまでも限られた条件における計算値であり、実際のケースをケースバイケースで考慮していけば、どちらにも大きく傾きます。
論文にも示しましたが、手操作と機械操作における初期費用、運用費用、維持費用の内訳は、図4に示すようになります。(論文で示した図はそれぞれのY軸スケールが異なりますが、本図では左右で比較できるように統一しています。)手操作での算出は、製造数や製造期間に依存せず、単純に作業者の時間単価に工数を掛けたものとしました。そのため作業者費用を含む運用費用がほとんどとなりますが、このとき、作業者は必要な細胞加工のスキルを有する必要があり、加工機関において教育訓練を受ける期間は製造に従事できず(遊休状態)、かつ作業者の作業を安定化するために必要な期間が長ければその間の教育訓練費用(指導者、実施場所、原材料費など)も大きくなります。これらを初期費用と考慮し、細胞加工に要する資源の総費用にできると考えました(左図)。対して機械操作の算出では、ライフサイクル期間の総コストを積み上げ、そこから割り振っています。ロボットアームを含む装置の設計や細胞加工動作のプログラムなど、ほとんどが初期費用で構成されますが、一方で、本条件ではロボットアームが無菌操作等区域(CPZ)内以外の作業を実施できない装置(設計)のため、導入や清浄化の作業を実施に必要な、細胞加工を行わない作業者1名分の運用費用が上乗せされます。

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