再生医療等製品の品質保証についての雑感【第36回】

2022/04/08 再生医療

水谷 学

細胞の保管・輸送について。

細胞の保管・輸送 (2) ~ 細胞加製品のチャネル【Perspective】 その1

はじめに

 現状で承認された再生医療等製品は、そのほとんどが自己由来細胞加工製品であり、対象も希少疾患が多く、その流通は製造業者から医療機関への直送であり、量も決して多いとは言えません。他方、将来的に再生医療等製品を産業として発展させるには、医療機関における製品の使用量(売り上げ)が飛躍的に拡大しなければ、細胞加工およびその支援産業が成り立ちません。筆者は、極論ですが、企業が利益を得ることはそれに比例して多くの患者が助かっていることと同義であると認識します。より多くの人に再生医療等製品を利用してもらうためには、画一的ではない、それぞれの治療に合ったチャネル(経路)を議論する必要があります。本稿では、再生医療等製品を患者に届けるためのチャネルについて、自己由来細胞加工製品を除外し、ロットを形成する同種由来細胞加工製品に限定して、個人の妄想(笑)を、多くの見解(perspective)の中の1つとして述べさせていただきます。
 筆者らは、阪大紀ノ岡研究室にて製造コストに関わる細胞製造設計のシミュレーション検討を行っていますが、例えば細胞治療(数千万個レベルの細胞数が投与される製品)の製造プロセスを自動化するには、年間数千例以上の臨床運用が継続的に実施されることが不可欠と考えます。そして事業化を検討するならば、そこにおける物の流れと、手順および人的資源(教育訓練レベル)を考慮することが最優先と考えます。本年度では、これらの物の流れと人的資源についても少々雑感を述べさせていただきます。当然、異論は多いと存じますが、笑って許していただければ何よりです。


● 投与場所は病院かクリニックか
 筆者は、細胞加工製品の製造を設計するときには、先ずコストパフォーマンス、次にスループットの向上可能性を検討します。製造要求する母数は、市場からのニーズに依存しますが、その根拠は治療対象となる患者の潜在数ではなく、治療を行う医療機関あるいは医師の、処理能力(手技に依存するものを含む)と、集客意思(治療対象の患者を募集する活動)に基づくと考えます。すなわち、対象となる細胞加工製品の投与が、病院で実施されるのかクリニックで実施できるのか、外科的に投与されるのか内科的に投与できるのか、年間投与数が多いのか少ないのかで、製品の保管や輸送などを含む、物流の考え方が大きく異なります。

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執筆者について

水谷 学

経歴

大阪大学 大学院工学研究科 講師。
1997年群馬大学大学院工学研究科博士後期課程を中退。国立循環器病センター研究所生体工学部にて生体適合性材料の研究を行った後、株式会社東海メディカルプロダクツにて循環器用カテーテルの開発および製造に関わる。2004年より株式会社セルシードにて再生医療に係る開発および品質保証を担当し、臨床用細胞加工物の工程設計や細胞培養加工施設の設計と運用を実施。東京女子医科大学での細胞シート製造装置開発を経て、2014年より現職。細胞製造システムの開発に従事。工学研究科の細胞製造コトづくり拠点において、細胞製造コトづくり講座(社会人教育)および標準化・規制対応に関わる共同研究を担当。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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