ゼロベースからの化粧品の品質管理【第15回】

2021/11/19 化粧品

今回は、機器の管理について考えてみる。

化粧品GMP手順書の作り方 ③機器の管理

 前回は構造設備のソフト面に関して、具体的な進め方をお話ししました。今回は、前回の構造設備にも一部関連する事項になりますが、③機器の管理について考えてみたいと思います。
 一般的には、機器の管理=測定機器の管理=測定機器の校正・管理のイメージが強いのではないかと思います。しかし今回は、もう少し広い範囲で考えてみたいと思います。どこまで広げるかという話しになった時、分かり易い考え方は、対外的に見て薬事届出書の構造設備および試験機器を対象にすることがも適切かと考えます。

1.    機器管理の基本的な考え方
 機器を使用する前には、本来求められている機器の要件、例えば、撹拌機ならばa)指定する条件で撹拌出来ること、b)GMPの3原則の要件である“衛生的であること”等、該当の機器が求められている要件を満たす状態であることが必須です。
 つまり、機器管理に関しては、
 ①製造管理基準書・衛生管理基準書に関する事項 
 ②品質管理基準書に関する事項に分けることが出来ます。
 ここで、製造管理基準書と衛生管理基準書をまとめた理由は、機器を対象とした場合には、製造管理の中には衛生面の要素を入れた方がシンプルで分かり易いと考えたからです。また、構造設備の管理の中のインフラ設備についても、設備の管理として、日常点検、定期点検・予防保全の事項もありますが、今回は機器の管理の対象から外します。但し、製造設備に付帯している温度計等の測定機は、製造設備の一部とも言えますが、測定機器に含めることとして扱います。

2.    生産設備に対する機器管理
2.1.導入時の確認
●DQ,IQ,OQという手順を踏むこととになりますが、全体を層別するならば、
a)直接中味に触れるもの・部位 b)間接的に触れるもの・部位 c)偶然的に触れるもの・部位 に分けることが重要です。、 更に、この区分の下で、GMPの要求を満たすために、分解性、洗浄の容易さ、埃・塵埃のコンタミリスクについて考えて、それぞれの管理方法をどうするのか、各層別したものに対する大枠の考え方をまとめておくことが重要です。
●接液する部分については、リモネン類に対するPEの膨潤等、耐中味による反応や樹脂材質によっては乳化を壊したり、塩素成分が樹脂中の鉄と反応して臭いが出たりしますので、仕様を決める際には典型的な成分に対する『ドブ漬け試験』等をお勧めします。また、パッキンや配管類については、フタル酸エステル系の添加物が溶出しないこと、『食品衛生法に準拠した物』であることの確認が必要です。
●機器の形状や仕様を決める際には、リスクアセスメントを行うことをルール化しておくべきです。例えば、PEタンクでしたら傷が付き易いので、傷が出来た場合を想定し、微生物コンタミのリスクを考慮した洗浄・殺菌方法、使用前の点検方法、定期的なリセットプログラムを設定することが必要です。

2.2.機器を使用前の適格性の確認
一言で言えば、目的とする機能を果たす状態であるか? 衛生的に製造が行えられる状態であるのか?を確認することになります。基本的な事項では、製造釜ならばバルブの開閉をチェックすることは当然ですが、錆がないこと、臭いがないことの確認は当たり前ですが、更に、これらの項目について具体的に何をすべきかを手順書の中で明確にしておくべきであると考えます。

2.3.使用中、使用後の確認
当然のことながら、適格性に関しては使用中と同時に、使用後の確認事項も手順書の中で明記にすべきです。一般的には、製造機器の管理は故障修繕になりがちですが、稼働時の音や振動等、機器の劣化状況を稼働に確認し、記録しておくことの習慣付けは重要です。品質に関する事項については、瓶のエアークリーナーですと、捕獲された物の確認と判断基準、対応方法を具体的に手順書で定めるべきです。

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執筆者について

鈴木 欽也

経歴

1980年に㈱資生堂に入社。掛川工場で処方開発・生産技術開発を担当。ネイルエナメルのゲル化剤、色材の開発や調色に関するコンピューターカラーマッチングシステムを開発。他に高圧乳化、凍結乾燥、パーマ剤、ヘアカラー等の特殊技術開発にも従事。
その後、本社生産技術部で海外事業戦略、海外工場建設、生産技術移転、海外薬事対応の業務を担当した後、再び掛川工場でファンデーションやマスカラ生産の移管業務を担当、本社で海外原料・資材・製品調達の業務を担当した後、中国北京工場の取締役工場長として、工場建設とシャンプー、リンスの現地生産化や化粧品の工業会の業務に尽力。
帰国後、掛川工場技術部長、大阪工場技術部長を歴任、FDAの査察受け入れやEU原薬登録を実施。
また、㈱コスモビュティー執行役員 品質管理部長としてベトナム工場、中国工場を建設。現在、㈱ディー・エイチ・シーさいたま岩槻工場の工場長でメーキャップ製品の工場改修・立上げを実施した。2017年から中小企業診断士として、鋳造業、サービス業、建築業等の事業計画作成支援や企業の5S活動支援を実施している。
品質管理に関しては、米国OTC製品の化粧品業界で日本国内初のFDA査察を受け入れ、指摘事項ゼロ件での対応、ヒアルロン酸のヨーロッパ原薬登録・米国FDA登録、ヒアルロン酸の原薬工場棟の増設を責任者として推進した経験を持つ。
公害防止管理者(水質1種、大気1種)、中小企業診断士(埼玉県正会員)、FR技能士、ターンアラウンドマネージャー(事業再生、(一社)金融検定協会認定)、健康経営EXアドバイザー、ISO9001審査員補、2022年5月から(株)エコノス・ジャパン代表取締役

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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